「……あの、
瑠夏のこと、なんだけど…」

「うん」

「よ、夜中、さ…
……キス、されて…」

「…………は?」

「へ、変だよな!?
何考えてんのかなーって、よくわかんなくて…」


額に手を当てて整理しようとしても、やっぱりよくわからない。

一晩何度も頭を過った、気まずそうな瑠夏の顔。


『間違えた』

『忘れて』


全然、どういう意味かわかんねぇ。


「それってさ、寝ぼけてただけじゃない?」

「……え?」

「好きな人の夢でも見て、現実とごっちゃになっただけでは?」

「好きな人の夢…」


おれを好きな人だと勘違いしてキスしてきた…と?


「だいたい、男同士のキスなんてノーカンじゃないか?
ジュースの回し飲みだって普通にしてたし、
瑠夏のそれは本当に寝ぼけてただけか悪ふざけだろうな」


『そんなに気にしなくていいんじゃない?』と佐野に言われた。


……気にしなくて、いい…?


『男同士のキスなんてノーカン』


瑠夏はただ、寝ぼけてただけで

千早(おれ)に対してしたかったわけじゃない…?


『間違えた』


その言葉は、

違う人だと思ってた、って意味…?