それが恋になるまで



それからお風呂も済ませて、リビングに布団を4つ並べてみんなで布団に入った。


「枕投げする?」

「やめろ。破れたら困る」


瀬戸の提案を即拒否する瑠夏。

こういうの、瑠夏は乗るやつだと思ってたけど……やっぱりなんか、怒ってる…?


「オレはもう寝るよ」

「えー!藍、爺ちゃんかよ!
恋バナとかしようぜ!」

「恋バナなら瑠夏がしたがるだろ…」


もうすでに眠そうだった佐野は、『おやすみ』と言うとすぐに目を閉じて寝息をたてていた。

…寝るの早っ!疲れてたのかな。

しかし……瑠夏が恋バナしたがるって、ほんとか?


「しねーよアホ藍。
恋バナなんてしたいわけねーだろ」


だよな。


「ちぇーっ、なんだよ!
じゃあ碓氷は?」

「えっ、おれ?」

「ねーの?恋バナ」


楽しそうにニコニコしながら聞いてくる瀬戸。

恋バナ、かぁ…。


「……おれ、恋ってあんまりわかんなくて」

「えっ!恋したことねーの?」

「えっと…異性と関わること、あんまなかったから…」

「まじ!?
オレ碓氷はめっちゃモテると思ったけどなぁ!」

「……モテるのと千早が恋するのは別だろ」


興味ないかと思ったけど、瑠夏が話を聞いてくれてて、ちょっと嬉しくなる。

けど、それ以上恋バナといえる話は出てこなくて、モソモソと布団を被った。


「瑠夏はないの?
歩梨(あゆり)とか絶対おまえ狙いじゃん」


歩梨って、今日来てた女子の1人だ。


「おまえはデリカシーとかないの?
仮に歩梨が俺のこと好きでも、おまえの口から伝わるなんて可哀想」

「いやいやまぁまぁ、オレの憶測だし、そこは大目に見てくれよ!」

「じゃあ今のは聞かなかったことにするわ」


『もう寝る』と言って布団を被っておれたちに背を向ける瑠夏。

瀬戸ももう話相手がいなくなって、『ちぇー』と言いながら大人しく仰向けに寝転んだ。