それが恋になるまで



「べつに、瑠夏のこと話してただけだよ!」

「俺?」

「そう。
佐野が、『瑠夏は碓氷をライバル視してる』って言ってた」

「アイツ……テキトーこくな!
ライバル視なんてしてねーわ!
友達だって言ってんだろ!千早も信用してねーのかよ」

「……だって瑠夏、おれの顔綺麗とか言うから、
顔で勝負してる自分と比べたりしてんだろうなー…って」


こんなの本人に言うのも恥ずかしくて語尾がだんだん小声になったら

むぎゅ、と片手で頰を押しつぶされた。


「俺がいつ『自分は顔で勝負してる』って言った?」

「い…言ってないでひゅ…」

「…ったく本当にアイツは嘘はつくわ察しは悪いわ、勉強以外はまじでポンコツ野郎だな」


おれから手を離した瑠夏は、そのままおれをじっと見つめて。


「千早の顔が綺麗って言ってんのは本心だよ。
俺と比べてるとかそんなんじゃねぇ」

「……本心って言われるのも恥ずかしいんだけど…」

「まじでそう思ったもん。
可愛いって感じではないけど、
クラスの女子より断然美しいと思ったね」


そんな真っ直ぐおれを見ながら真顔で…

反応に困るんだが…。

なにも言えずに黙ってたら、瑠夏がおれにデコピンしてきた。


「俺は千早の顔に対抗したいわけじゃねーし、
勝負したいわけじゃねーよ。
あんなポンコツ藍の言うことなんか鵜呑みにすんな。わかった?」

「……はい」


でも、瑠夏。

佐野の言うこと、一個だけ、本当っぽいものがある。


「……あの、さ、瑠夏」

「ん?」

「……瑠夏…


……好きな人、いる…?」