それが恋になるまで



「瑠夏ー、これどうやって解くの?」

「瑠夏ぁ〜英語わかんない〜」

「はいはい1人ずつ見るから待ってろ」


「藍、これは?」

「それ前にも説明したけど」

「覚えらんないんだよ〜」

「教えるのだる」

「優しくねぇーー!!」


お昼ご飯を早めに食べてから、早速勉強会が始まった。

瑠夏は女子を、佐野が男子の勉強を見ることになって。

瑠夏の方は盛りあがってるのに、こっちの空気は…あんまり良くない。


とにかく佐野の、『なんでこんなもんもわかんねーんだ?』って視線が怖すぎる…。


聞きたいけど、怖くて聞けなくて1人ノートと向き合ってたけど…

さすがに進まなさすぎて、おずおずと手を挙げた。


「さ、佐野…」

「碓氷。わかんないとこあった?」

「ここ…って、どうなってるんでしょうか…」


佐野の視線がプレッシャーになってるせいで、つい敬語になってしまう。

ノートを覗き込んで、佐野は『あぁ』と穏やかな顔を見せた。


「ここ、難しいよな。
これはこっちの単元の公式を覚えておかないといけなくて」

「そこ苦手な単元だ…」

「ここから覚えような」

「はい……」


おれだけ場違いなせいか、おれにはちょっと優しい佐野。

ただ優しくされると、余計に声かけづらいっていうか…。遠慮しちゃうっていうか。

瑠夏は遠慮するなと言ったけど、佐野とはそこまでの仲じゃないので気まずい。


「碓氷だけずるい!
ていうか藍、碓氷にだけ甘くね!?」

「碓氷はうるさいおまえと違っておとなしいから、
やりやすいんだよ」

「賑やかって言え!」


男子メンバーの中で唯一絡んだことがない瀬戸(せと)

グループの中でも賑やか担当で、どちらかというとクールな佐野とはあんまりウマが合わなさそうだなと思ってたけど、本当にそうらしい。