それが恋になるまで



ケーキを冷蔵庫にしまってるとき、キッチンを使った形跡があったのを見つけた。


「瑠夏、キッチン使ったの?」

「ん?あぁ。
朝からカレー作ってた。
昼みんなで食べようと思って」

「カレー…」


って、瑠夏ん家のカレーって辛口って言ってなかった…?


「大丈夫。甘口のルーにしたから」

「あ…
ごめん、気ぃ遣わせて…!」


遠足の時、おれが甘口カレーを美味しいって言ってたから…!

覚えててくれたのは嬉しいけど、こういう時はおれに合わせてみんなに迷惑かけてる気がして申し訳ない…。


「大丈夫。藍も実は辛口苦手だし、
一応女子もいるし、俺ん家のカレーよりこっちの方がみんな喜ぶと思うから」


『俺に悪いとか思わなくていいから』って軽くチョップされた。


「あのさ、
千早はもっと、俺に対して図々しくしていいからな」

「……でも…」

「友達なんだから。
遠慮とか、ごめんとか言われると、
壁感じるからヤダ」


拗ねたように言う瑠夏に

おれは結構弱いみたいで。


「……わかっ、た。
すぐには無理かもしれないけど…!」

「うん。ちょっとずつ慣れて」


……あ、まただ。

また、そんな嬉しそうに笑って…

瑠夏のその笑顔を見ると

胸の奥がきゅってなって


なんかすごく、泣きそうになるんだ。


友達の笑顔見て泣きそうになるなんて、おれどうかしてる。



───ピーンポーン


そこでインターホンの音がして、一気に冷静になって涙も引っ込んだ。


「藍たちかな。
はーい」


玄関の方に歩いていく瑠夏の背中を見てると、少し寂しい。


「おーっす瑠夏!」

「お邪魔しまぁーすっ」


玄関の方から賑やかな声がして、やっぱりみんなだったんだって思ったら

『もう二人きりの時間が終わっちゃったんだ』って、また寂しくなった。