「…そっか。
あ、ぼくそろそろ行かないと!
約束の時間に遅れちゃうから…」
『じゃあね!』と祐希はお店を出て走って行ってしまった。
おれも会計を済ませて、瑠夏と一緒に店を出た。
「まさか中学んときの千早の友達に会うとはなー」
「まぁ、家近いし」
「どういう繋がり?
なんで仲良くなったん?
女の子なのに」
「祐希とは、オタク友達みたいな…。
出席番号順だと隣でよく話してて、
アニメ好きなんだとかで盛りあがって仲良くなったんだ」
「さっきアーケードがどうとか言ってたけど、
あのゲーセンの音ゲー、一緒にやりに行ってたのか?」
「うん、ちょっとだけだけど」
お互いに音ゲー得意じゃなかったからか、祐希は誘ってもいつもあんまり乗り気じゃなかった。
だから本当にたまに。一緒に行ったのはほんの数回だ。
「……本当にアニメ好きだったんかねー?」
「え?」
「千早と話すためにわざと合わせてたのかもしれねぇじゃん」
腕を組んで、棒読みっぽく呟く。
……合わせてた、なんて、そんな。
「…だとしても、
祐希は嫌そうな顔しなかったよ」
「千早に好かれたかったからじゃね?」
「……なんでそんなこと言うんだよ」
まるで祐希が
無理しておれに合わせてくれてたみたいな言い方。
おれは…気の合う友達だって、思ってるのに。
「おれに好かれるためとか、そんなわけない。
だって、彼氏できたって言ってたし」
祐希にとって、おれは〝友達〟で、その彼氏は〝恋愛対象〟だったんだ。
おれは〝恋愛対象〟じゃないのに、わざと合わせる意味がわからない。
「ニブチン。
さっきのなんて、どう考えても『千早に気にしてほしい』って顔だった」
「はあ…?」
そんなの、瑠夏の妄想だろ。