それが恋になるまで



ムッとして瑠夏を睨む祐希。

これは……ちょっと空気が良くないなと思って。


「そ、そういえば祐希、
アーケードとかやりに行ってる?」


話題を変えてみたら、

祐希は気まずそうに顔をそらした。


「実は、あんまり行けてなくて…」

「そうなんだ。
たまには一緒に…」

「あの、さ!
……ぼく、彼氏できて…」


頬を赤く染めたまま、

チラとおれを見て祐希はそう言った。


「彼氏…」

「うん…だから、あんまり行く暇なくて…。
今日も、彼氏と会うのに、手土産なにしようって思って、
それで、千早がうちに来る時によく買ってきてくれたこれを買おうかなって……」

「じゃあ、今から彼氏の家行くんだ?」

「う、うん…」

「そっか、彼氏か。
充実してんだな」


そりゃあおれに連絡する用事も遊ぶ暇もないよな。

でも、祐希の生活が充実してるならよかった。

勉強ばっかりで苦しんでたら、もっと連絡とかしてやればよかったって思ってただろうから。


「よかったな」

「……あー…うん…」


心なしか、あんまり嬉しそうじゃない祐希。

おれ今なにか気に障ることでも言っちゃったのかな…?


「あ…千早、そういえばさっき、これ欲しかったって…」

「あ、いいよ。おれ違うの買うから」


祐希が差し出してくれた紙袋は受け取らずに、別のロールケーキを買うことにした。

……アーモンドロールにしようと思ってたのも、瑠夏が甘さひかえめの方がいいかなって思ってたからで。

だから。


「瑠夏、どれ食べたい?」

「え、俺が選んでいいの?」

「うん」

「じゃあ……モンブランロール」


瑠夏がいるんだから、瑠夏がほしいものを買えばいい。


「千早、ほしかったらこれあげる…」

「ううん、こっちでいいから」


瑠夏に喜んでもらいたくてここに来たんだから。