「暇だから俺もケーキ屋ついてっていい?」
「うん」
「やった!」
何がそんなに嬉しいのか、瑠夏が歯を見せて笑った。
……自惚れかもしれないけど、おれと2人でいるとき、瑠夏って良く笑うような…。
グループでいる時も笑ってるけど、それとは違う笑みをよく見せてくれる気がする。
……って、他の人とも2人きりなら見せてるかもしれねーか。
*
「あれ…」
ケーキ屋さんに着いて、買うのを決めてたおれはすぐにいつもその商品が置いてある場所に行ったのに
そこには何もなくて、空になったショーケースだけが残ってた。
まだ午前中なのに。もうなくなっちゃったのかよ…。
「千早、あった?」
「……ない」
「売り切れ?」
「うん……」
買う予定だったケーキ、『アーモンドロール』。
ポップだけがまだ残ってる。たぶん、もっと前になくなってたらポップも片付けられるから、ついさっきなくなったんだろう。
クリーム少なめで甘さひかえめで、表面にアーモンドが散りばめられてて。甘いの苦手な人でも食べやすいと思って手土産によく選んでた。
まさかないなんて思わなかった…。
諦めて他のものを買うかーと思ったら。
「すいません、このアーモンドロールって売り切れちゃったんすか?」
おれがかなりショック受けてるように見えたのか、瑠夏が店員さんに声をかけてた。
「瑠夏、いいよ!そんなわざわざ…!」
どうしてもそれじゃなきゃいけなかったわけじゃないし…!
それにおれはあんまり喋りたくないからわざわざ聞かないのに、スッと聞けちゃう瑠夏の陽キャさがすごい…。
「すみません、先ほどあちらのお客様がお買い上げになられたもので最後で…」
声をかけられた店員さんは、今レジで会計してたお客さんを指した。
………あれ?