それが恋になるまで



「はい、これ6人班の分」


渡された袋を受け取って、確認のために中を覗いた。

入っていた市販のカレールーには、『甘口』と書いてあった。

よかった!食べれる!

ハチミツまで借りずに済んだ〜とホッとしてみんなの元へ戻ろうとしたら。


「千早、なんで一人で行ってんだよ」


瑠夏がこっちに向かって歩いてきた。

……さっきの女子は、一緒じゃないみたい。


「声かけようと思ったけど、
瑠夏、取り込み中だったから…」

「勝手に絡まれただけだから。遠慮せず声かけろよ」

「……悪い」


取り込み中だったから、なんて言ってるけど、本当は声かける勇気がなかっただけ。

瑠夏みたいな陽キャじゃないんだから、そんなこと簡単にできると思わないでほしい。

けど瑠夏に言ったって、『そんなの諦めてるだけ』って思われるだけ。

実際そうだよ。諦めてるだけだ。

だから、瑠夏にはそんな言い訳したくないんだ。ダサいって思われそうだから。


「けどよかったー。
千早、てっきり松雪さんと一緒かと…」

「え?なんで松雪さんと一緒に来るんだよ?
女子は道具洗いしてるだろ?」

「班で担当勝手に変えてるとこもあんだよ。
べつに野菜運びに男子3人もいらないしな」


たしかに。全然一人で持てる量ではある。

道具洗いの方が得意な男子もいるかもだしな。


「つーか、さっきも松雪さんとなんか話してたろ」

「え?
あー…作るの楽しみだねーって話…」

「……ふーん。
なんだよ、めっちゃ仲良いじゃん」