邪魔しないように、大人しく窓から外の景色を見て過ごす。
だんだん風景が山しか見えなくなってきて、退屈になってきて。
瞼が重くて、眠るつもりはないけど目を閉じた。
───……
「千早、
おーい、千早」
「ん……?」
「おはよ」
隣の瑠夏がおれの肩を揺すって目を開けた。
え……『おはよ』?
窓の外を見ると、山の景色…ではなく明らかに駐車場。
そして次々とクラスメイトたちがバスを降りていく。
「……おれ、寝てた?」
「ぐっすり」
ただ目を閉じて意識はあると思ってたのに。いつの間にか意識飛んでたし、しかも目的地まで起きなかったのか…?
おれ人前であんまり眠れるタイプじゃないんだけど……まじか。
「瑠夏……寝顔見た?」
「え?うん」
「ヨダレとか出てなかった…?」
「出てない出てない。大丈夫」
あぶねー…。
ヨダレ垂らして『汚ねぇ!』って瑠夏に思われるのだけは嫌だ!
……せっかくできた友達だから、嫌われたくない。
「俺しか見てないから安心しろ」
本当は恥ずかしいから瑠夏にも見られたくはなかったけど。
……でも、本当に瑠夏以外見てない?前の席の佐野とか、瑠夏と話すために覗いてそうな気がするけど…?
しかしこればかりは寝てしまった自分が悪い。佐野にからかわれようがおれのせいだ。
「べつに見られても気にしないから」
まぁヨダレが垂れてなかったのなら見られて困ることはあんまりないと思うし。
そう思って言った言葉だったんだけど。
「…………俺が気にすんの」
「………はい?」
「あ、早く降りねぇと」
もうほとんどの人がバスから降りていて、瑠夏もその流れに沿ってバスを降りた。
さっき瑠夏がなんかボソッと呟いた気がしたけど……気のせい?