喋る流れもなさそうなのでお菓子でも食べようとリュックを開けようとしたら
「碓氷くん、お菓子一緒に食べよ」
通路を挟んで隣に座ってた松雪さんが、さっきおれがあげたお菓子を一緒に食べようと誘ってくれた。
「いいの?」
「碓氷くんがくれたやつじゃん!」
『なんで遠慮してんのー?』って笑う松雪さん。
……陰キャはこういうの、とりあえず遠慮しちゃうもんなんだよ。
松雪さんにはわかんないだろうけど。
「じゃあ…いただきます」
「いただいてるのはうちの方な気がするけど」
『変なの』ってまた笑う松雪さん。
でも、彼女の笑顔があまりにも無邪気だから、
『バカにされてる』とか不快な気持ちにはならなかった。
「…ていうかさ、碓氷くん」
「うん?」
「さっき、二階堂くんに『千早』って呼ばれてた?
班決めの時はそう呼んでなかったよね?」
「あー…うん。
その後、班一緒だしってことで交流の機会があって呼ぶようになったんだ」
班が一緒だからってわけじゃないけど、親睦を深める一歩として名前を呼ぶようになったんだし、間違ったことは言ってないよな。
「それって…」
「ん?」
「……ううん!なんでもない」
その時、松雪さんがおれの奥にいる瑠夏の方にチラッと見た気がした。
……あれっ?おれなんかまずいこと言ったかな…?
…………あ。
もしかして、おれだけ勝手に瑠夏と親睦深めたのが気に入らなかった!?