ホームルームが終わって──放課後。
帰りの支度していると、ポン、とおれの机に誰かの手が乗った。
顔を上げたら、そこにいたのは二階堂。
……え、二階堂…!?
廊下から賑やか集団の声がするから、てっきりもう行ったかと思ってたのに。
「俺、今日も行くけど、
碓氷も来る?」
誰にも聞かれないよう、小声で囁いてくる。
……この、二階堂とおれだけの、秘密の時間。
「い…こうかな…」
「じゃ、先に行って待ってるわ」
ポン、と肩を叩くと、
友達に呼ばれて、二階堂は教室を出ていった。
……あっ。じゃあおれも急いで準備しないと。
とは思いつつ、ノート類は折れ曲がらないように丁寧にリュックに入れる。
チャックを閉めてリュックを背負ったら
「碓氷くん!」
高い声に呼び止められて、教室を出ようとした足を止めた。
「…松雪さん?」
「あー…あのさ!
せっかく班一緒になったし!
遠足の前に親睦会?みたいなのしない?って、うちらで話してて…」
そう言いながらチラッと同じ班の女子二人の方を見る松雪さん。
親睦会…たしかに、遠足前にお互いのこと知っといたほうが楽しめる気がするけど…
「ごめん、今日は用事があって…」
「あ…ううん!そうだよね!急には困るよね!
あ、じゃあいつなら暇か教えてー」
こういう誘いを断ると
もうおれのことを誘ってくれるやつなんて今までいなかったけど、
松雪さんはまた誘ってくれるし、気まずい空気にしないところがすごい。