「瑠夏とライバルになるのはしんどいと思うよ。
アイツ平気で他人の彼女奪えるから」


佐野がそんなことを口にした時、

いつの間にか戻ってきていた二階堂が佐野の頭を引っ叩いた。


「おまえは!嘘をつくな嘘を!」

「中学の時、実際奪ってたじゃん」

「奪ってねーから!
あっちが勝手に俺に惚れて勝手に別れただけだから!
俺とは付き合ってねーから!!」


『信じるなよ碓氷!』って言われたけど、

正直そんなことはどうでもよくて。

おれが松雪さんを好きだと誤解されてる方が問題な気がする。


「おれ、二階堂とライバルになんてならねー、から」

「え?なんの話?」

「す、好きな人被るとか、絶対しないから安心して」


おれの発言に『ふーん』と呟く佐野と、わけがわからなそうな二階堂。

おれは生まれてこの方、恋をしたことはない。

だから二階堂と好きな人が被るなんてことがあったら、すぐに諦められると思う。

だって、二階堂とおれなんて、おれを選んでもらえるはずないから。