───ただ。


手が届かないというのは、おれが陰キャで彼が陽キャだから、というだけではない。


「とか言って瑠夏、
放課後まともに遊んでくれたことねーじゃん」

「そーだっけ?
まぁ結局帰って勉強漬けって感じだけどな」

「毎回成績いいもんな」


談笑してるのが、席が遠いおれにも聞こえてくる。

それだけ声が大きいとプライバシーもなにもない。もう少しまわりを見て話すべきでは…。

いや、逆にわざと聞かせてるのかもしれない。そう。二階堂の放課後の予定は埋まっているのだと。


罪な男だ。

女子は皆、二階堂くんと話したくて、遊びたくてたまらないのに。

二階堂は女子はおろか、男子ともあまり遊んだりしないらしい。


二階堂のプライベートは謎。

だけど、


おれは学校以外で、二階堂を見たことがある。



……と言っても、本当に彼かどうかは定かではないのだが。


「今日の放課後もどうせ断るんだろー」

「あー、バレた?」


二階堂が輪の中心で笑う。

『なんだよー』って言いながらまわりの人たちが二階堂を小突く。

そんな姿を見ると、

おれが見たのはやっぱり、二階堂とはかけ離れている…というか、信じがたくて。


毎日、スマホを見ては『二階堂か』と思い、学校に来ては『違うか』となるのを繰り返している。