「あら、今日は早いわね」
「……まぁね」
「なにか楽しみなことがあるのー?」
ソワソワしてるのが母さんにもバレてる。
「……数学の単元が、今楽しいとこで」
「今まで勉強が楽しいなんて言ったことあったかしら?」
───ギクッ。
おれ嘘つくの苦手か。母さんもよく気付くな。
勉強楽しいって言ってるんだから褒めればいいのに。楽しいなんて嘘だけど。
「……楽しまないとやる気出ないから」
「そう。楽しいならいいけど」
楽しんで勉強できてたら、成績はもっと良くなるのになぁ。
おれは平均だもんな。
それも二階堂とでっかい差。
「たまにはお友達と勉強会とかすればいいのに」
「……友達と遊ぶのに、勉強に時間使うとかやだ」
本当は一緒に勉強する友達がいないだけだけど。
「中学の時はしょっちゅう友達と遊んでたのにねぇ。
今でも連絡とってるの?」
「いや…勉強忙しいかもだし」
「じゃあ一緒に勉強すればいいじゃない」
「学校違うんだから、範囲もレベルも違うよ」
母さんの小言もうるさくて、急いでトーストを口に詰め込んで『ごちそうさま』と席を立った。
……そういえばアイツ、今どうしてんだろ。