あー…。

あの時はおれはまだ瑠夏への気持ちが恋愛感情だって気付いてなかったから気にならなかったけど…

今同じことを瑠夏と佐野たちがやってたら……たしかに嫌かも。


「今後は気をつける…」

「アイツら距離の詰め方すげぇからな、
ちょっとは気にして」

「うん。
あ、そういえば瑠夏…」

「ん?」

「瑠夏にキスされたこと、
佐野には話しちゃったんだけど…」


もしかしたら佐野はおれが瑠夏を好きなことに気付いてるかも…


「……あのさ、その時藍になんて言われた?」

「え?
あー…寝ぼけて好きな子と間違えただけとか、
男同士だからノーカンだとか…」

「……やっぱアイツ気付いてなかったのかよ」


『アイツのせいでこんなに遠回りしたのか』と瑠夏は頭を抱えた。

えと……どういうことだ?


「瑠夏、言ってる意味がよくわからない…」

「俺、藍は俺が千早を好きなことに気付いてんのかと思ってて。
だから泊まった日、もし千早が俺に何かされたことを相談してきたら、それとなくフォローしといてっつったんだけど、
俺的には『いい加減な気持ちでやってないよー』みたいなこと言ってんのかと思ってたのに全く逆だし。
俺が千早を好きなのをそれとなく伝えた上で千早に避けられたと思ってたから、千早にとってキモかったんかなって」

「えっ、違う!」

「それはわかってる。
告白してくれた時に理解したから」


『やっぱり藍はポンコツだったわ』と瑠夏はため息をついた。

瑠夏に『佐野はポンコツだ』って言われてたのに、おれが佐野に相談なんかしたからこんなややこしくなっちゃったのか…。


「おれが佐野を信用しすぎてたせいで…」

「俺もアイツのこと信用するのやめるわ」


それは可哀想、と思ったけど、

瑠夏の表情で冗談だとわかって、2人で笑った。