それが恋になるまで


松雪さんがどんな答えを求めてそれを聞いてきたのかはわからないけど。


「えと…、
恋人、います……」


〝彼女〟ではない。でも、〝彼女〟はいないけど〝恋人〟がいるって言ったら怪しまれると思って。

だから否定はせずに、〝恋人〟がいると答えた。


「え……、あ、…そ、そうなんだ…。
お、同じ学校?」

「それは……」


秘密にしたほうがいいのか、瑠夏と話し合ってないからどう返事しようか考えていたら。


「千早ー」

「瑠夏!」


階段の下から瑠夏の呼ぶ声がして、

瑠夏はおれと松雪さんに気付くとすぐ階段を上って目の前までやって来た。


「2人で何してんの」

「ノート運んでて」

「ふーん…。
松雪さん貸して。
俺と千早で運ぶから」


瑠夏が松雪さんから強引にノートを奪う。

もう少し優しい言い方できないのか…?松雪さんもむくれてる。

不満そうな松雪さんに、瑠夏が


「ちょうど千早と話したいことあるから、
松雪さんは先に教室行ってていいよ」


そう言ったら、松雪さんは邪魔しないようにとすぐに瑠夏にノートを預けて先に教室に行ってしまった。


「……瑠夏、もう少し言い方…」

「優しくしろって?無理だろ。
千早と2人でいたのかと思うだけで気が狂いそう」

「……っ!」

「優しい方だろ。ノートも持ってんだから」


強引だったし、優しくはないと思うが…。

でも、

『千早と2人でいたのかと思うだけで気が狂いそう』

それって、つまり


「し、嫉妬でもしたのかよ〜…」


そう聞こえてならないんだけど、ちょっと冗談混じりに言ったら。


「そうですけど。
言っただろ。もう俺戻れないとこまで千早が好きだって」


ぎゅっと鼻をつままれて、

優位に立ってると思ってたけど、おれが照れる番だった。