「……っ、
………好きだ!」
おれと瑠夏しかいない教室に、おれの声が響いた。
その時初めて、瑠夏がおれを見てくれた。
「ごめん、こんなこと言って…っ
けど、今瑠夏に伝えたいことはそれしかなくて…!」
「…っ、ちは…」
「好きになってごめん…
友達の振る舞いできなくてごめん…
キスされたの、嬉しいと思ってごめん…」
「……千早っ」
「おれ、男なのに、気持ち悪くてごめん、
こんなこと言うのも気持ち悪いかもしれないけど、
おれ、瑠夏と恋人に…っ」
『なりたい』と言う前に
ガタガタと並べられた机を乱しながら、瑠夏がおれの前に走ってきて。
瑠夏に、ぎゅうっと強く抱きしめられた。
「る…か…?」
「……キモいのは俺の方だ」
「……え…?」
「俺だってなぁ、
もうずっと前から、千早のこと友達なんて思えてねぇんだよ」
瑠夏の、おれを抱きしめる力が、痛いくらい強い。
「本当は、キスなんてするつもりなかった。
千早が望むように、ちゃんと友達でいようと思ってた。
でも、抑えられなかった」
「……え…っ」
「俺、遠足の時のバスでだって、我慢してたんだからな」
え、…え?
じゃあ遠足のときには、瑠夏はもうおれのこと…?
「でも、瑠夏あの時、『間違えた』って…」
「順序間違えてるだろ」
「順序……」
じゃあ、人違いの『間違えた』じゃなかったんだ…。
「どうしよう、瑠夏…おれ」
「?」
「夢、見てるみたいだ…」
付き合えたら一番嬉しいと思ってたよ。でも、絶対無理だと思ってた。
同性からの好意なんて拒否されると思ってたし、だから友達にすら戻れないと思ってた。
今自分にとって、一番都合がいいことが起こってる。
これを夢みたいだと思わずにいられるか。