彗のことを考えながら授業が終わり、教室には昼休みの軽やかな雰囲気が漂っていた。
窓の外を見ながら一息ついていると、隣から宙くんの声が聞こえてきた。

「想乃ちゃん、修学旅行楽しかった?」

宙くんの声に振り向くと、自分が自然と笑みを浮かべていることに気づく。 仮面に囚われていた頃なら、こんな風に普通に笑顔を向けることすらできなかったかもしれない。

「うん、楽しかったよ。宙くんはどうだった?」

「俺も。いろいろバタバタしてたけど、なんだかんだ楽しかったよ」

宙くんは笑いながら答え彼の表情が少し柔らかくなった。自然と会話も弾んでいく。

「それにしても、想乃ちゃんちょっと変わったね。なんか楽しそう」

不意に言われたその言葉に少し驚く。
自分が変わったことに気づいてくれるのがなんだかむず痒くて、それでも嬉しかった。
宙くんとの会話も以前よりずっとリラックスして楽しめている気がする。

「そうかな…うん。そうだね、自分でも変われてたらいいなって思ってる」

少し躊躇いながらも思ったことを口にする。
宙くんを見ると、彼は驚いたような表情を浮かべたがすぐに微笑んだ。

「それは…彗のおかげ?」

「え、な、なんで…?!」

突然の言葉に、頬が徐々に熱くなる。まさか、宙くんは気づいているのだろうか――私が彗を好きなことに。彼の優しい笑みを見ていると嘘をつく気にもなれなくて。

「…うん」

近くにいないと聞こえないくらい小さな声だったけれどきっと私の好意はバレバレだろう。
だって、今の私の顔はこんなにも熱くなっているのだから。