唯との出会いは、高校の入学式だった。
新しい生活が始まるという期待と不安が交差するなかで、私は一人になるわけにはいかないと思っていた。元々社交的なタイプではないし、人見知りも少しある。だからこそ、仮面を見て不安そうな子に声をかけて友達を作ろうと考えていた。
教室の中を見回しながら、なるべく断られずに友達になってくれそうな子を探していると、突然後ろから明るい声が聞こえてきた。
「ねえねえ!名前なんて言うの?」
「…え?」
振り向くと、声の主は可愛らしい笑みを浮かべた女の子だった。その笑顔の上には、少し不安げな仮面も見える。でも、仮面さえも彼女の笑顔に引っ張られているようで、どこか安心感があった。
きれいにまとめられたお団子とくりくりの目。
まるで今日のために気合いを入れてきたのが分かるようだった。
「私の名前は日南想乃だよ。あなたの名前は?」
とりあえず友達ができそうで安堵しながら答える。
「想乃ちゃん、かわいい名前だね!私は篠原唯。唯って呼んで!これからよろしくね!」
彼女の笑顔を見ると、仮面もさっきまでの不安を消し去り満面の笑みを浮かべている。
素直で純粋な子だな、と私は思った。唯は最初から「取り繕う」という言葉とは無縁な人だった。彼女は悪い意味で人を欺くことなんてことは一度もなかった。
「うん、よろしくね。唯ちゃん」
そう言ったとき、ふと先程の自分の行動がひどく嫌なものに思えてきた。
不安そうな子を探して友達になろうとする私と、不安ながらも自分から明るく話しかけられる唯。私たちは正反対の性格だけれど、唯は高校三年生になった今でもずっと私と仲良くしてくれている。
たまに不安になる。もし唯にこのことがバレたら、クラスメイトに私が仮面を見ていることが知られたらどう思われるんだろうか。
「気持ちが筒抜けなんて気持ち悪い」「怖い」…きっとそう思われるんだろう。そんな嫌な想像をしていると、始業のチャイムが鳴り、現実に引き戻された。
「想乃、聞いてる?またぼーっとしてる!」
今日何度目か分からないその言葉に、「ごめんごめん」と軽く返した。
平凡に、安全に、この生活を続けるために、私は皆の様子をうかがいながら、いつもと変わらない日常を送る。仮面が見えているなんてそもそも誰も信じないだろうし、気味悪がられるだろう。
だから絶対にこのことは誰にも言わないし、バレないように振る舞うのだ。
そう心に誓いながら、授業が始まった。
新しい生活が始まるという期待と不安が交差するなかで、私は一人になるわけにはいかないと思っていた。元々社交的なタイプではないし、人見知りも少しある。だからこそ、仮面を見て不安そうな子に声をかけて友達を作ろうと考えていた。
教室の中を見回しながら、なるべく断られずに友達になってくれそうな子を探していると、突然後ろから明るい声が聞こえてきた。
「ねえねえ!名前なんて言うの?」
「…え?」
振り向くと、声の主は可愛らしい笑みを浮かべた女の子だった。その笑顔の上には、少し不安げな仮面も見える。でも、仮面さえも彼女の笑顔に引っ張られているようで、どこか安心感があった。
きれいにまとめられたお団子とくりくりの目。
まるで今日のために気合いを入れてきたのが分かるようだった。
「私の名前は日南想乃だよ。あなたの名前は?」
とりあえず友達ができそうで安堵しながら答える。
「想乃ちゃん、かわいい名前だね!私は篠原唯。唯って呼んで!これからよろしくね!」
彼女の笑顔を見ると、仮面もさっきまでの不安を消し去り満面の笑みを浮かべている。
素直で純粋な子だな、と私は思った。唯は最初から「取り繕う」という言葉とは無縁な人だった。彼女は悪い意味で人を欺くことなんてことは一度もなかった。
「うん、よろしくね。唯ちゃん」
そう言ったとき、ふと先程の自分の行動がひどく嫌なものに思えてきた。
不安そうな子を探して友達になろうとする私と、不安ながらも自分から明るく話しかけられる唯。私たちは正反対の性格だけれど、唯は高校三年生になった今でもずっと私と仲良くしてくれている。
たまに不安になる。もし唯にこのことがバレたら、クラスメイトに私が仮面を見ていることが知られたらどう思われるんだろうか。
「気持ちが筒抜けなんて気持ち悪い」「怖い」…きっとそう思われるんだろう。そんな嫌な想像をしていると、始業のチャイムが鳴り、現実に引き戻された。
「想乃、聞いてる?またぼーっとしてる!」
今日何度目か分からないその言葉に、「ごめんごめん」と軽く返した。
平凡に、安全に、この生活を続けるために、私は皆の様子をうかがいながら、いつもと変わらない日常を送る。仮面が見えているなんてそもそも誰も信じないだろうし、気味悪がられるだろう。
だから絶対にこのことは誰にも言わないし、バレないように振る舞うのだ。
そう心に誓いながら、授業が始まった。