びっ……くりした。



名札に小さく書かれた、『桂』という文字。



あれが桂さん。



皆憧れる完璧な桂さんなんだ。



目が合った時、心臓が軽く跳ね上がった。



あんなに綺麗な女の子が同級生にいたんだ、と初めて知った。



それにしても桂さんはなんで赤くなってたんだろうか。



もしかして僕のあとに、裏庭へ誰か来たのか?



桂さんの気になる人とかだったら気になるけど……、そんなの探るような趣味はない。



さっきの一瞬の出来事を思い出しながら、僕は各教室の花瓶を変えに回った。







「じゃあ、行ってきます」



「行ってらっしゃい。気をつけてね」



「もちろんだよ」



昨日は図書館、今日は河川敷でまったり本を鑑賞。



最高の2日間だ、と僕はガッツポーズがしたくなる。



雲が少ししかない晴天の下、僕は自分の白い自転車に乗って見慣れた道を進む。



昨日図書館で借りてきた本と、1本の水、スマホと財布のみをカバンに入れて河川敷へ。



河川敷の橋の下は、どこかの不良か誰かが柱に落書きをしているけど、ゴミが全然なくて居心地がいいんだ。



あまり日も当たらない影だし、夏でも快適にのんびりと過ごせる。