癒しと結婚の証。
この石は人間用に作られたこの世界で特別な物の一つ。
天にいる者でさえも手に入れることが難しい。
でも、セスなら。
「スラ兄さんも知ってるよな? 僕だけが魔法を使えること」
そう、吸血鬼の中でも魔法は使える。
たった一人、ただ一人にだけ与えられる・・・最悪。
本来なら長男のシセル、王が使えるはずがなぜか三男のセスになってしまった。
その秘密はまだまだ解き明かすことは不可能だったが、今は違うようだ。
「はっ、魔法を使えない兄さんたちが羨ましい。普通に生きて普通に食って・・・はあ、本当につまらない人生。もっと努力すれば良かったのに、兄さんたちはそれをしなかった、しようってする心さえもなかったクズ。ははっ、人間でも吸血鬼でも、こんなに格が違うなんてガッカリだな!」
言いたい放題でさっきからシセルとスラ、ソリーを馬鹿にして自分だけを棚に上げるセス。
その顔は怪しげに満足していて気持ち悪さがはっきりと滲み出ている。
でも。
「ふっ、お前は本当に何も知らないな。なぜお前が魔法を使えるか、お前は遊ばれてるんだよ」
同じように不気味な笑みを浮かべながらゆっくりとアムを横に倒して力強くセスの首を両手で掴むスラ。
セスは何を言われているのか全く理解できずに固まったまま呼吸を一気に止められて息をまともに吸えない。
「あ、あっ、うっ」
これが兄妹喧嘩なら何も誰も文句など言う必要はないが、ナイは違う。
「セス! ダメよ、私はセスと幸せになるのよ、こんなことで死んだら嫌」
「こいつと幸せになるなんてよく言えるな?」
「えっ」
まさかスラから質問をされるとは一ミリも考えていなかったナイはセスとは違う吸血鬼らしい真っ赤な瞳を何倍も闇に近い輝きで目と合ってしまい、恐怖で力が抜けてしゃがみ込んだ。
「・・・はっ、えっ」
ナイがしゃがみ込んでしまったことに心の底から腹を立てたセスが自分の力全てを出し切るように両手でスラの両手を掴み返すが、当然兄のスラの力が上なため、簡単に振り解かれてしまった。
「兄、さん・・・くっ!」
確実に不利な状況の中、アムはただ一人視界が真っ赤なことにまだまだ恐怖を感じて目を瞑ったまま。
「・・・・・・」
どうしよう。
今、何が起きているの?
スラ、スラ、どこにいるの?
私を置いてどこかに行ったりしてない、スラは優しくて私の自慢の夫。
私はスラの妻になってからまだ何もできてない。
何かしてあげたい、でも、今の私は何もできない。
どうしたら今の状況を変えられるの?
視界が血みたいに真っ赤で他の色が分からずに目を瞑り続けるのも良くはない。
だからと言って、無理やり体を動かして自分の身を守るために何かをするのだって良くもない。
アムにできることなどほとんどんないだろう・・・そう、アム一人の力では。
「スラ!」
心が真っ黒な闇のように暗くなっているのが限界を超えてつい大声でスラの名前を呼んだアム。
だが。
「はっ、何だ、まだ生きてるんだな。ガッカリだな」
とっくに一人で勝手に死んでいたと思い切っていたセスが心の底からアムを憎むようにスッと風よりも早く走ってアムの顎をごっそり千切るように掴んだ!
「あっ、ううっ」
痛い、苦しい、助けて。
アムの視界に映るものなんて何もない。
いや、ただ見えていないだけ。
なぜ今こうなったのかを全く理解できずに呼吸を体全体を必死に動かして繰り返しても、何が原因なのかが分からない限り、アムはただ呼吸を、息を吸うしかない。
けど。
「セス! いい加減にしろ、アムから手を離せ!」
それ以上、アムに手を出したら、アムを消したら俺はセスを・・・永遠に許さない!
愛する妻のため、二人で生きたいという小さな夢。
人間でも吸血鬼でも、生きるためなら、誰かと一緒にいたいなら。
どんなことでもして、どんなことでも後悔して生きる。
人生というのは一体どこへ向かっているのか?
「か、ああっ、うう」
私、このまま殺されて、スラと離れて永遠に会えなくなってしまう?
せっかく夫婦になって家族になって幸せな日々が待っていると思っていたのに、こんなことで、他人に惑わされるくらいなら・・・人間なんてやめる!
この石は人間用に作られたこの世界で特別な物の一つ。
天にいる者でさえも手に入れることが難しい。
でも、セスなら。
「スラ兄さんも知ってるよな? 僕だけが魔法を使えること」
そう、吸血鬼の中でも魔法は使える。
たった一人、ただ一人にだけ与えられる・・・最悪。
本来なら長男のシセル、王が使えるはずがなぜか三男のセスになってしまった。
その秘密はまだまだ解き明かすことは不可能だったが、今は違うようだ。
「はっ、魔法を使えない兄さんたちが羨ましい。普通に生きて普通に食って・・・はあ、本当につまらない人生。もっと努力すれば良かったのに、兄さんたちはそれをしなかった、しようってする心さえもなかったクズ。ははっ、人間でも吸血鬼でも、こんなに格が違うなんてガッカリだな!」
言いたい放題でさっきからシセルとスラ、ソリーを馬鹿にして自分だけを棚に上げるセス。
その顔は怪しげに満足していて気持ち悪さがはっきりと滲み出ている。
でも。
「ふっ、お前は本当に何も知らないな。なぜお前が魔法を使えるか、お前は遊ばれてるんだよ」
同じように不気味な笑みを浮かべながらゆっくりとアムを横に倒して力強くセスの首を両手で掴むスラ。
セスは何を言われているのか全く理解できずに固まったまま呼吸を一気に止められて息をまともに吸えない。
「あ、あっ、うっ」
これが兄妹喧嘩なら何も誰も文句など言う必要はないが、ナイは違う。
「セス! ダメよ、私はセスと幸せになるのよ、こんなことで死んだら嫌」
「こいつと幸せになるなんてよく言えるな?」
「えっ」
まさかスラから質問をされるとは一ミリも考えていなかったナイはセスとは違う吸血鬼らしい真っ赤な瞳を何倍も闇に近い輝きで目と合ってしまい、恐怖で力が抜けてしゃがみ込んだ。
「・・・はっ、えっ」
ナイがしゃがみ込んでしまったことに心の底から腹を立てたセスが自分の力全てを出し切るように両手でスラの両手を掴み返すが、当然兄のスラの力が上なため、簡単に振り解かれてしまった。
「兄、さん・・・くっ!」
確実に不利な状況の中、アムはただ一人視界が真っ赤なことにまだまだ恐怖を感じて目を瞑ったまま。
「・・・・・・」
どうしよう。
今、何が起きているの?
スラ、スラ、どこにいるの?
私を置いてどこかに行ったりしてない、スラは優しくて私の自慢の夫。
私はスラの妻になってからまだ何もできてない。
何かしてあげたい、でも、今の私は何もできない。
どうしたら今の状況を変えられるの?
視界が血みたいに真っ赤で他の色が分からずに目を瞑り続けるのも良くはない。
だからと言って、無理やり体を動かして自分の身を守るために何かをするのだって良くもない。
アムにできることなどほとんどんないだろう・・・そう、アム一人の力では。
「スラ!」
心が真っ黒な闇のように暗くなっているのが限界を超えてつい大声でスラの名前を呼んだアム。
だが。
「はっ、何だ、まだ生きてるんだな。ガッカリだな」
とっくに一人で勝手に死んでいたと思い切っていたセスが心の底からアムを憎むようにスッと風よりも早く走ってアムの顎をごっそり千切るように掴んだ!
「あっ、ううっ」
痛い、苦しい、助けて。
アムの視界に映るものなんて何もない。
いや、ただ見えていないだけ。
なぜ今こうなったのかを全く理解できずに呼吸を体全体を必死に動かして繰り返しても、何が原因なのかが分からない限り、アムはただ呼吸を、息を吸うしかない。
けど。
「セス! いい加減にしろ、アムから手を離せ!」
それ以上、アムに手を出したら、アムを消したら俺はセスを・・・永遠に許さない!
愛する妻のため、二人で生きたいという小さな夢。
人間でも吸血鬼でも、生きるためなら、誰かと一緒にいたいなら。
どんなことでもして、どんなことでも後悔して生きる。
人生というのは一体どこへ向かっているのか?
「か、ああっ、うう」
私、このまま殺されて、スラと離れて永遠に会えなくなってしまう?
せっかく夫婦になって家族になって幸せな日々が待っていると思っていたのに、こんなことで、他人に惑わされるくらいなら・・・人間なんてやめる!

