二人が案内されたのは寂れた神殿だった。
 そこには村長が待ち構えていた。
 挨拶を交わしたあと、村長が言う。
「神官様がおいでになると聞いて掃除はしましたが、修繕は行き届いてないかと思います。申し訳ございません」
「こちらこそ、ご準備ありがとうございます」
 セリオンは深々と頭を下げた。
 レナシェルは厩に馬をつなぎ、セリオンに続く。
 神殿は石造りで立派だった。
「村の横の森は魔物が出ますから、入らないでくださいね」
「魔物ですか」
 セリオンは首をかしげながら聞いた。
 来る前に調べた情報との差異があった。
「森は神域ではないのですか?」
「昔はそうでしたが、長く神官様も不在でしたから。魔獣が棲み着いたのは最近のようなんですけどね、村のもんはもう森には行きません」
 魔獣は魔力を持っていて、動くものはすべて襲いかかるという。
「昔は神獣がいたらしいんですけどね。その頃は村も活気があったそうで。まあ百年くらい前だそうですけど。でも密猟のせいで神獣がいなくなってしまって、神官様もいなくなって。やっぱり神官様がいらっしゃらないと」
「密猟される神獣? 神の獣ってその程度かよ」
 セリオンは呟くレナシェルの足を踏もうとしたが、さっとかわされた。同じ手は通用しないらしい。
 都会ではそれほどではないが、田舎に行くほど信仰が厚くなる。
 しっかり務めを果たさないと、とセリオンは自分に発破をかけた。
 一通りの説明をすると、村長たちは帰っていった。
「レナシェルさん、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました」
「いや、いい。これからの私の宿でもあるからな」
「は?」
「助けた代金代わりにここに泊まる。お優しい神官様だ、断るなんてしないよな」
 レナシェルはニッと笑った。