「いいって! 他国の言葉に袖すり合うもなんたらって言葉があるじゃん」
「袖すり合うも他生の縁、ですね」
「それそれ」
 女はニッと笑ってみせた。

 女はレナシェル・ベルトラードと名乗った。賞金稼ぎだという。
 こんな美人な賞金稼ぎがいるとは、とセリオンは驚きを隠せない。
「私はセリオン・カルナベール。最高神であらせられる光の女神、アーリス様にお仕えしています」
「ふうん」
 レナシェルは興味なさそうに答えた。
「あなたにはアーリス様より軍神ガレス様の方が身近でしょうか」
「まあ、そうだな。同業にはガレスのお守りを持ってるやつは多い」
「あなたは持たないのですか?」
「あんなもん気休めだろ」
 レナシェルは鼻で笑い、セリオンは苦笑した。
「で、なにをやらかして飛ばされたんだ?」
「普通の転勤ですよ」
「……そういうことにしといてやるか」
「あなたこそ、どうして、こんなところへ?」
「こっちに高額な賞金首が来たって噂でね。探すにしても拠点が必要だから最寄りの村へ行くところだったんだ」
「そうなんですね」
 セリオンは頷く。
 賞金首はつまりは犯罪者で指名手配犯だ。田舎に逃げるなどよくあることだ。
 賞賞金首は生死問わずの場合もあれば、生け捕りが指定されているときもある。
「どんな賞金首なんですか?」
「悪いことは全部一通りやったようなやつだ。人の命なんぞ屁でもない、みたいな。私らだって殺すが、むやみやたらと殺すことはない」
 レナシェルの目が嫌悪に細まった。
 嫌悪どころか憎悪すら感じられ、セリオンは彼女の過去を思う。賞金首になにか恨みがあるのだろうか。
「私としては、どなたの命も大切にしてほしいんですけどね。罪を悔い改めるように説得して」