力量の差はあきらかだった。
 男たちが渾身の一撃を放っても、女は軽くいなして斬り返す。
「くっ! ひけ!」
 ボスらしき男が悔しげに声を上げた。
 息絶えた仲間を置き去りに、男たちが引き上げていく。
「助かった」
 セリオンは大きく息をついた。
「ありがとう、助かりました」
「どうってことないさ」
 女は答え、手を差し出す。
 セリオンはその手を強く握り返した。感謝をこめて。
「違う!」
 女が声を上げる。
「金だよ、金!」
「は?」
「感謝は形にしないと伝わらないだろ」
「お金なんて持ってません」
 僅かな金銭は今しがた野盗にとられたばかりだ。
「まじかよ! ただ働き!」
 女は天を仰いだ。
「神は人の善意を必ずご覧くださっていますよ」
 セリオンが言うと、女は眉をひそめた。
「その言い方、神官か?」
「そうです。この先の村に行くところです」
「神官なら金持ってるだろ。貧乏人から信仰を理由にせびり取って金持ちに媚びて贅沢しやがって」
「そういう人は一部ですよ。私みたいなペーペーは貧乏です」
「ふうん……」
 胡散臭げにセリオンを見てから、女はなにかを閃いたように目を輝かせた。
「一緒に行ってやるよ。まだ野盗もうろついてるだろうし」
「あなたを護衛に雇うお金はありません」
 セリオンは困惑して答える。