すぐに密猟者たちに向けて風を発生させる。
「うわ!」
「なんだこの風!」
 男たちが慌て、ファービアの拘束が緩む。その隙に、レナシェルは突進し、ファービアを捕まえている男を斬った。
「ぎゃあ!」
 男の悲鳴に構わずファービアの腕をつかみ、引きずるようにして男たちと距離を取る。
「なんだお前……レナシェルか!」
 大人の一人が言い、顔を隠してい布を取った。
 レナシェルは顔に憎悪をたぎらせる。
「やっと見つけた、賞金首。お前を殺す」
「実の母を殺すというの」
 レナシェルの標的——彼女の母ローエルは顔を覆う布を取り払い、嗤う。
 レナシェルは油断なく剣を構えた。

***

 レナシェルがファービアを確保するのを見て、セリオンは飛び出した。
 母ユニコーンがまたクラナンへ突進している。
 セリオンは腕を突き出した。
 風が舞い、母ユニコーンを撹乱する。
 が、歩みを緩めたものの、彼女は歩を止めない。
「クラナン、手を離せ!」
「離すな、妹を殺すぞ!」
 同時に飛ぶ声に、クラナンは震えて立ちすくむ。
 クラナンにはファービアが助けられたのは見えていない。
「やめろ、ユニコーンの前で血を流すな! 弱って死ぬぞ!」
 ユニコーンは穢れに弱い。どうしてそうなるのかの研究は進んでいないが、とにかく血や悪意に弱い。
「知るか。多少値は落ちるが、死体でも売れる」
 男は剣を構え、自分たちの首領を見る。
 首領であるローエルはレナシェルとにらみあっていた。