三人のうちの一人は顔を布で覆っていた。布の隙間から鋭い紫の目だけが見える。あとの二人の男は顔を隠していない。
 三人とも腰に剣を下げていた。旅をする傭兵のたぐいなら剣を持っていてもおかしくはないが、この村の付近ではあまり見かけないものではあった。
 とはいえ、レナシェルと知り合ったあとではそういう人への警戒も少し緩んでしまう。
「こんにちは!」
 クラナンに気づいた一人が声をかける。人の良さそうな笑みに、クラナンは少しホッとした。
「こんにちは」
 クラナンはファービアを後ろにかばい、返事をする。
「この森に珍しい獣がいると聞いてね。良かったら案内してくれないかな」
 男の言葉に、クラナンは戸惑う。
「ユニコーンがいるのは内緒なんだよ。誰にも言っちゃいけないの」
 ファービアが言い、クラナンは慌ててファービアの口を手で塞いだ。
「俺たちは何も知りません」
「見るだけでいいんだ。ちょっとだけ。そしたら満足して帰るからさ」
「でも」
「その様子だと君たちは見たんだろ? いいなあ、ずるいなあ」
「ずるくない! 運が良かっただけなの!」
「お前は黙ってろ」
 クラナンはファービアを咎め、彼女は不満に頬を膨らませた。
「案内してくれたらお礼もするよ、ほら、金貨だよ」
 顔を隠した人が金貨を見せた。
「嘘、これ、本物!?」
「本物だよ。見たことないのかい?」
「ない」
 思わず手を伸ばしたクラナンだが、その人は手をひょいとかわして金貨を握り込む。
「案内してくれないならあげられないなあ」
 クラナンは口をへの字に曲げた。
 金貨があれば、神殿を直すのに使ってもらえるだろうか。
「それって、一枚でどれくらいなの? 神殿を建て替えることできるくらい?」
「そうだよ」
 大人は迷いなく答える。
「見るだけなんだよね?」
 クラナンは確認する。