「命が惜しければ有り金全部置いて行け!」
 やっぱり野盗だ。
 セリオンは緊張に顔を強張らせた。
「私は旅の者です、これだけしか持ってません」
 セリオンは懐から小さな袋を差し出す。
 男の一人が受け取り、中を確認する。
「こんだけかよ!」
「今どき農民でももっと持ってるだろ」
「荷物も置いて行け」
「これはダメです」
 背負ったズタ袋の中には神官の服も入っている。悪用されたらたまらない。
「大切なもんが入ってるんだな」
 ニヤリ、と悪党が笑う。
 セリオンは失策を悟った。だがもう遅い。
「あなたたちには価値のないものですよ」
「うるせー! 命とどっちが大事なんだ!」
 もちろん命だ。
 あれ(・・)を使えばこいつらなど一発だ。だが、ずっと隠してきたものをこんなところで使いたくはない。
 セリオンは顔をしかめてズタ袋を背からおろした。
 その時だった。
 騎馬の駆ける音が響く。
 男たちははっとそちらを見る。
 セリオンは振り返った。
 剣を抜いた女剣士が馬を疾駆させていた。
「なんだあれ」
「女か?」
 男たちがざわめく。
 馬から飛び降りた女剣士はすぐさま手近な男に斬りかかる。
 男は血しぶきを上げ、一刀のもとに倒れた。
「賞金首を探していたが……お前らじゃなさそうだな」
 つまらなさそうに女は言う。
「てめえ!」
「よくも仲間を!」
「野盗をやってるくせに」
 女はせせら笑い、斬りかかる男に反撃する。