「神官様、これはうちが作った葡萄酒だ、たっぷり味わってくれ」
「神官様、まさか飲めないとか言わないよな?」
 男たちはすでに飲んでおり、赤くなった顔で言う。
「神々の恵みです。いただきましょう」
 セリオンが答えると、わっと歓声が上がった。
「そうこなくちゃ!」
「ほら女ども、どんどんついで!」
「神官様、どうぞ」
 酒のせいではなく頬を赤く染めた女性がセリオンの杯に酒を注ぐ。
「私の林檎酒もどうぞ」
 飲み干すより先にカラフェが差し出される。
「あら、私が先よ。木苺のお酒です」
 別の女が割り込む。
「はは! 神官様、モテモテですな!」
「若い男が少ないし、神官様は、なんていうかこう、都会の香りがして垢抜けてらっしゃるから。喋り方も雅で、俺らとはぜんぜん違うよなあ!」
 男たちが笑う。
「いえ、そんな」
 セリオンは困惑した。王都ではこんなにモテたことはない。特におしゃれでもない上にイケメンでもないのに女に囲まれるのは居心地が悪かった。
「おお!」
「すげえ!」
 わーっと声が上がり、セリオンはそちらを見る。
 レナシェルがジョッキを飲み干し、彼女の目の前の男はぐでんぐでんになって机に突っ伏していた。
「つえーな、姉ちゃん!」
「これくらい飲んだうちに入らん」
 レナシェルは答える。
「勝負は私の勝ちだ、もらっていくぞ」
 言って、レナシェルは机に置かれた銅貨を手にする。
「賭け飲みですか」
 思わずこぼすセリオンを見て、レナシェルはニッと笑った。
「姉ちゃん、勝ち逃げはねーわ。今度は俺と勝負だ」
 言って、男が彼女の前に座る。