「ま、わからんでもないけどね。魔法を持ってるなんて言ったら利用しようとするやつらが寄ってくる。村人に知られたら、めちゃくちゃ依存されるだろうな」
「そうです。ですから誰にも言わないでくださいね」
「いくらくれる?」
「お金を持ってないのはご存知でしょう」
「そうだな」
 レナシェルは苦笑した。
「こいつらをあなたが倒したことにすれば、いくらかは入るのでは?」
「ばかにすんな。そこまで落ちぶれてない」
 レナシェルの言葉に、セリオンは意外に思った。
「てっきり、そういうのは平気な方かと誤解しておりました。申し訳ございません」
「私にだってプライドがある」
 レナシェルは口をへの字に曲げた。
「失礼しました。では、こいつらのことは村に知らせて、警備隊に渡すことにしましょう」
 セリオンが言い、レナシェルは頷いた。



 翌日、セリオンは村人に告げた。
「野盗たちを説得にしようと洞窟に行きましたら、すでに何者かによって捕縛されていました。こっちに連れてきて警備隊に引き渡しましょう」
「そのまま干からびさせときゃいいんじゃね?」
 村人の一人が言う。と、そうだよな、と同意する者がいた。生活がかかっているから野盗に容赦がない。
「そうおっしゃらずに。野盗を捕まえた人も、彼らの命を奪うことはしなかった、彼らが反省するための慈悲を与えることは、神のご意志でもあるでしょう」
 神の名を出されると彼らは弱かった。
「まあ、神官様がそう言うなら」
「仕方ないな」
 彼らはしぶしぶ野盗たちを連れてきて、警備隊に引き渡すまでの世話をしてくれた。



 数日後。無事に野盗を警備隊に引き渡した村は、野盗討伐で浮かれた人たちによって集会所で宴会が開かれていた。
 ついでに神官様の歓迎会だ! と騒いだ男たちに集会所に連れて行かれ、セリオンは酒の入った杯を渡された。