「うわ!」
「なんだ急に!」
 男たちが慌てる。
「魔法ですよ。このままあなたたちの命を奪うこともできます。投降してください」
「ふざけんな!」
「やれ!」
 男たちはかえっていきり立つ。
「まあ、そうなるよなあ」
 諦めたようにセリオンは呟く。
 再度腕をふると、風は刃のようになり、男たちの剣を持つ腕を襲った。
「うわあ!」
「痛え!」
 口々に叫び、剣をとりおとす。
 さらに、セリオンは風をいくつも発生させて、檻のように彼らを取り囲んだ。
 彼らの周りの空気の濃度を薄くしてやると、次々と彼らは気絶した。
「めんどくさいなあ」
 ぼやきつつ、セリオンは彼らを一人ずつ縛り上げた。
「ふうん、そんな特技があったんだ」
 突然の声に、セリオンはハッと振り返る。
 そこにはレナシェルがいて、セリオンと目が合うとニッと笑った。
「どうしてここに」
「仕事柄、気配には敏感なんだ。あんたが出ていくのに気づいて尾行した。まさかこんなんだとはな」
 レナシェルはセリオンの隣に立ち、気絶した男たちを見やる。
「いつぞやの野盗だな」
「そうですね」
「やはり私が追ってるやつはいない」
「そうですか」
 セリオンは淡々と答える。
「なんで魔法を隠してた?」
「言う必要はないです」