「なら諦めろ」
「世知辛いな」
 セリオンが言う。
「これで食ってるんでね。ただで仕事はできない」
 レナシェルは言い切り、村長はため息をついた。
「野盗が反省してくれたらいいんですけどね」
 セリオンの言葉に、レナシェルは鼻で笑った。

 夜遅く、セリオンは神殿を出た。
 月は西に傾き、人々は寝静まっている。
 その中を静々と歩いていく。
 東の街道から外れた洞窟に行くと、布で巻いて顔を隠した。洞窟の中からは焚き火の明かりが見えた。その前に男が一人、立っている。見張りのようだ。
「誰だ!」
 誰何の声が飛ぶ。
「ああ、ここで合ってましたね」
 セリオンが言うと、男が中から出てきた。
「なんだてめー」
「私、皆様に日頃の行いを反省していただきたく参りました」
「はあ?」
 男は訝しげにセリオンをにらむ。
「反省して村人に謝ってください。でなければ捕まえます」
 セリオンの言葉に、男は噴き出した。
「おい、みんな、面白いやつが来たぞ」
 男の声に、仲間が集まる。
「なんだよ、寝てたのに」
 あくびをしながら現れる男もいた。
「こいつさ、俺たちに反省して謝れだと!」
 見張りかゲラケラと笑う。
「そんなことでいちいち呼ぶなよ」
「さっさと片付けろ」
 言われて、見張りの男はムッとした。
「わかったよ」
 男は剣を抜いてセリオンに向かう。
「わかってくれませんよね、やっぱり」
 セリオンは素早く手を振った。
 と、一陣の風が洞窟内に吹き込んだ。