次の日も、やはり笹原さんは同じ時間に河原へやってきた。
「おつかれ~」
「お、おつかれさま」
「今日は練習めっちゃハードで超疲れたよ~」
そう言いながら僕の隣に腰を降ろす。
手に提げていたビニール袋から、ソーダアイスを取り出した。
「ほい、お土産!今日も暑いね」
そう言って僕にひとつ手渡してくれた。
「え、あ、ありがとう…」
「いいってことよ」と言いながらもうソーダアイスに齧りついている。
「で、二巻目読み終わった?」
「あ、うん。さっきちょうど図書館に行って来て、三巻目を借りて来て読み始めたとこ」
「ふむふむ、もうすぐクライマックスですな」
河川敷に並んで腰を降ろして、僕達はソーダアイスを齧りながら本の話で盛り上がった。
今読んでいる本もそうだけれど、笹原さんとは不思議と本の趣味が合って、僕が読んだ本は大抵笹原さんも読んでいた。
というより、彼女の読書ジャンルが広かった。
歴史小説、エッセイ、ラノベ、文芸雑誌まで、色んなジャンルを読み漁っているようだった。
そんな風に本の話で盛り上がっていると、あっという間に陽が傾いてきて、目の前が眩しいくらいのオレンジ色に包まれる。
「さてと」
そう言って笹原さんが立ちあがって、僕を見下ろす。
「今日も楽しかった!また明日ね」
「あ、うん…」
笹原さんの後ろ姿を見送りながら、僕は、あ、また伝えそびれた、と思うのだった。