今日は1年最後の日だった。私は先日サンタさんからもらったワイヤレスイヤホンを付けて音楽を聴きながら、電子書籍を読み漁っていた。それにしてもサンタさんはすごい。スマホをもらったことを見越してイヤホンをプレゼントしてくれるのだから。
 紙の本とは違って、電子書籍は初心者の作品も混ざっていた。紙の本に読み慣れていた私にとっては表現が甘いところもあって、なかなか読みづらいと思う時もあった。
 「夏芽、午後から大掃除するよ」
 「うん、わかった」
 いつも掃除はするけど、年末の大掃除は本格的に掃除をするから、ずっと探していたものが見つかったりする。私は案外好き。そんなわくわくを抱きながら私は掃除の準備をした。
 やっぱり掃除は楽しい。高い本棚の上を掃除していたら、ずっと探していた本が見つかった。見つからなかったから近いうちに買おうと思っていたものだった。大掃除はまるで宝探しみたいにロマンで溢れていた。だから掃除が終わってしまった今、少し気分が沈んでいた。すると物音がどこからか聞こえた。よく耳を澄ましてみると、物音はお母さんが眠る部屋から聞こえてきた。私は部屋に続く廊下を早歩きして向かった。
 部屋に入ると何かを整理しているお父さんと目が合った。
 「お母さんの部屋も掃除しているの?」
 「うん、綺麗な場所で眠っていてほしいからね。今はお母さんの私物を整理しているところ」
 「私もやりたい!」
 お母さんが生きた証。それを見て触ってみたかった。この整理は私に更なるわくわくを与えてくれる気がした。
 「いいよ」
 私はお父さんと私物の整理を始めた。大きな箱の中にはたくさんのものがあった。生前使ってたお化粧道具に、銀行の通帳、アルバムや、アルバムに入りきらなかった写真。そしてお母さん自身が書いた数々の小説。著者名には『由紀夫』と書かれていた。
 そこにはお母さんのすべてがあった。お母さんにしか残せないものもたくさんあった。箱の底が見えてきた時、黄ばんだ薄い冊子を見つけた。
 手に取ってみると、それは何かの台本のように見えた。
 『透明な恋』。それがこの台本の題名だった。