「アゲてけ、アゲてけー♪」
「孫……孫……♪」
枯山水の庭園をぴょんぴょん飛び跳ねる杏子さんを、車椅子の上から眺める龍次郎さん。手拍子しながら微笑むその姿は、4歳児の孫娘を見守るお爺ちゃんのようだ。
一方。僕の方は視界にすら入っていないようだが、おかげで自転車のパーツについてメイドさんから話を伺うことができた。
「年代も国籍も不明ですが、アシスト機能付きの自転車であることは確かですね」
メイドさんがチェンソーのようにブンブン丸に搭載された装置のスターターロープを引っ張ると、一瞬だけモーターの作動音がした。
「杏子さん。この謎装置いらないですよね?外したほうが楽ですよ絶対」
「ダメだし。ツケてけ、ツケてけー!」
「孫……孫……!」
はぁぁぁ。とため息をつく僕を見て、メイドさんがクスクスと笑う。
「観念しないとですね」
「うぅ……こういった部品に、心当たりはありますか?」
「んん……」
メイドさんは顎に手を当て、山の方を見やった。