「ルールだからね。お金を使うのは禁止。パーツは不用品を再利用すること」
「だからって、こんな豪邸で……」
僕らはいま、巨大な虎の毛皮の上で揃って正座している。
この田舎町の名士である西園寺家の邸宅で、自転車のパーツを無心するためだ。
一応、事前に連絡をしてあるらしいが……。
そして僕らの目の前には、西園寺家現当主・西園寺龍次郎その人が鎮座している。
御年106歳。卯年である。
玉座を彷彿とさせる車椅子にちょこんと座る小柄な老人だが、その眼光は激動の時代を生き抜いてきた猛者の凄みを湛えている。
「……孫」
龍次郎さんは、杏子さんを指さしてそう言った。