「そういえば、昼休みに購買の前で千鶴ちゃんと有村くんが騒いでたって話を聞いたんだけど、また何かされたの?」
「あっ、そう!その話をしようと思ってたの!」
「?」
真綾のほうから聞いてくれなかったら、もしかしたら話すのを忘れていたかもしれない。ナイスだよ真綾!
「あのね、しばらく凪と距離を置こうと思うんだけど」
「え?」
「ん?」
「あ、いや…続けて?」
真綾があまりにも驚いた顔をするから何かまずかったかと思って中断したけど、続けるように言われたから遠慮せず続けることにする。
「今日の昼休みに、また私がおせっかい焼いちゃって…。すっごく恥ずかしい思いしたから、しばらく学校で顔合わせたくないなって思ったの」
「い、一体何をされたの…?」
「されたっていうか……今回ばかりは私が悪いんだけど、ただでさえ人が多いところで、大声で凪の名前呼んじゃったから注目集めちゃって…」
「あ〜…それは恥ずかしいね」
「しかも、その後相変わらず凪が変なスキンシップとってきて、もう散々だったんだよ…!!だから私、明日から少なくとも一週間は、学校では凪と話さない!だから真綾、私がもし無意識に凪におせっかい焼こうとしてたら、全力で私を止めて!殴ってもいいから!」
「な、殴るとかはできないけど…っ!…いいよって言いたいところだけど、本当に千鶴ちゃんはそれでいいの…?」
「うん」
自分の言いたかったことを一通り言うことができた私は、真綾の顔を伺いつつも、目の前のストローに口をつける。しばらく考えるような動作を見せた後、真綾は渋々といった顔ではあったものの、『わかった』と了承してくれた。
「ありがとう真綾!でも、できるだけ私が自分で制御するから!」
「う、うーん…うん…」
歯切れの悪い真綾の返事なんて気にせず、私はこの後は何をしようかと考え始めた。今の時刻は夕方の5時すぎ。流石に7時くらいには帰りたいから、あと2時間くらいある。
「ねぇ真綾、後でちょっと本屋にやってもいいかな?買ってる漫画の新刊が出たんだよね」
「あ、それなら私も欲しいやつがあるから全然いいよ。これ飲み終わったら行こう」
「うん」
「ところで、千鶴ちゃんって、漫画以外の本は読まないの?」
最新刊か何冊出ていたか頭の中で思い出していると、不意に真綾からそんな質問をされた。確かに、人と本屋に行く時の理由は、大抵“漫画を購入するから”というものが多かった気がするし、家で自分の部屋に置いているのもほとんどが漫画だ。だけど別に、文字ばっかりの小説を読み切ったことがないとか、そういうわけじゃない。