翌日の土曜日。私はいつも休日に起きている時間にちゃんと起きて、朝ご飯を食べて着替えて、課題に手をつけて時間を潰していた。現在の時刻は9時35分。凪とは同じマンションの同じ階だから、凪のほうも10時くらいに出ればそれでいい。私はただ待つだけ…なんだけど、やっぱりそわそわしてしまうわけで。凪とは幼馴染だし家も近いし、昔から2人で出かけることなんて普通にあった。高校生になってからは、それぞれ勉強や部活やバイトなどで忙しくなったため減っていたけど、別に初めてではない。それなのに、久しぶりに2人きりで出かけるというだけで緊張している。相手はあの凪だ。何をされるかわからないから警戒こそすべきだけど、緊張する必要なんてないのだ。

「あれ、姉ちゃん、今日どっか行くの?」

「千智、まだ行ってなかったんだ」

 そろそろ凪が来てもおかしくない時間になってきたので、リビングで待機しようと軽く荷物をまとめて入ると、体操服に着替えた千智がソファに横になっていて声をかけられた。

「もうすぐ凪がうちに来るから、ここで待っとこうと思って」

「え、凪くん来んの!?俺も会いたいんだけど!」

 千智は?と聞こうとしたけど、それを遮るように千智が目を輝かせて言った。千智は昔から凪によく懐いていて、私と凪が出かける時はいつも羨ましがっていた。

「部活何時からなの?」

「11時から。あと30分くらいしたら家出る」

「じゃあ会うくらいならできると思うよ。凪、10時に来るって言ってたから」

「マジでっ!?やっば、めっちゃ久しぶりに会うかも!」

 確かに、私と凪が学校以外に会うことが減ったから、必然的に千智と凪が会う機会も減っていたかもしれない。となれば、可愛い弟の小さな願いくらい聞いてあげたいというのが、姉としての思いだ。
 そんなことを思っていると、噂をすればと言った感じでインターホンが鳴った。凪が来たのだ。私が出ようと思って玄関に向かうと、それより先に千智が飛び出して行った。よっぽど凪の顔が見たいらしい。凪だという自信はあるけど、もし凪じゃなかったらどうするつもりなんだろうか。

「凪くんひさしぶりーっ!!」

「うわっ、千智か…。ひさしぶり」

「なぁなぁ凪くん、姉ちゃんとどこ行くの?デート?」

「はっ!?違うから!」

 玄関の扉を開けて凪を出迎えた千智が、とんでもないワードを言い出して、慌てて否定する。良い意味でも悪い意味でも純粋無垢な千智は、男女が2人で出かけることイコール『デート』という認識しかしていないらしい。私も凪はぜんっぜんそういう関係ではないのに。でも、あの凪のことだから、こういう話題になったら_____