領主とて、医者の言葉を鵜呑みにはしなかった。男を罰することはせず、しかしハーブをどうするかが問題となった。
根絶やしにすることも可能。
だが、男にしてみれば、母が残してくれた大事な形見のようなもの。
薬に近い効能があるからいつか役立つかも知れないと領主を説得した。
領主は飢えから領民を守った男の頼みを無下にすることはできず、妻もまたそれを願わなかった。
かといって、領民が勝手に栽培し口にするのは危険だと考え、ハーブは全て領主が管理し、その土地は立ち入り禁止とすることになった。
*
ドイルは空になったグラスに酒を注ぐ。
「今の領主もこの話は知っている。その時の領主の妻と自分の妻が重なり過剰に反応したのだろう」
「そんな、ハーブが原因だって決まってないのに。それにミオは何も悪くないじゃない」
代わりに怒りを口にするリズにミオは小さく首を振ると、沈んだ声でぽつりと言った。
「多分、流産の原因はハーブにあるわ」
ミオの言葉にリズとドイルは視線を合わせる。ミオは席を立ち、リュックからハーブの入った瓶を一つ持ってきた。
「ミオ、それは?」
「セージのハーブよ。マーガレット様の好みが分からなかったから数種類持ってきたうちの一つなのだけれど」
ミオは瓶をテーブルに置き、キッチンに行って再び湯を沸かし始めた。
リズがそれを手に取る。ドイルの話では紫色の花と聞いたけれど、瓶の中身は白っぽく枯れた葉。蓋を開け匂いを嗅ぐと、花のような甘い芳香とはまったく違う、新緑の森のような草いきれの香りがした。
「リズ、それを貸して」
「ええ、作ってくれるのね」
リズが瓶を手渡すと、ミオはリュックからさらに幾つかハーブが入った瓶を取り出し、セージとブレンドする。少し癖のあるハーブなのでカモミール等と混ぜて飲みやすくすることに。
出来上がったものを、温めたカップに注ぎテーブルに置いた。
「これが元領主の妻が飲んだハーブティよ」
「確認するけれど、毒ではないのよね」
「もちろん。ただ、セージには『ツヨン』という成分が含まれていて、これには中絶作用があると言われているから妊娠初期の方には出さないわ」
根絶やしにすることも可能。
だが、男にしてみれば、母が残してくれた大事な形見のようなもの。
薬に近い効能があるからいつか役立つかも知れないと領主を説得した。
領主は飢えから領民を守った男の頼みを無下にすることはできず、妻もまたそれを願わなかった。
かといって、領民が勝手に栽培し口にするのは危険だと考え、ハーブは全て領主が管理し、その土地は立ち入り禁止とすることになった。
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ドイルは空になったグラスに酒を注ぐ。
「今の領主もこの話は知っている。その時の領主の妻と自分の妻が重なり過剰に反応したのだろう」
「そんな、ハーブが原因だって決まってないのに。それにミオは何も悪くないじゃない」
代わりに怒りを口にするリズにミオは小さく首を振ると、沈んだ声でぽつりと言った。
「多分、流産の原因はハーブにあるわ」
ミオの言葉にリズとドイルは視線を合わせる。ミオは席を立ち、リュックからハーブの入った瓶を一つ持ってきた。
「ミオ、それは?」
「セージのハーブよ。マーガレット様の好みが分からなかったから数種類持ってきたうちの一つなのだけれど」
ミオは瓶をテーブルに置き、キッチンに行って再び湯を沸かし始めた。
リズがそれを手に取る。ドイルの話では紫色の花と聞いたけれど、瓶の中身は白っぽく枯れた葉。蓋を開け匂いを嗅ぐと、花のような甘い芳香とはまったく違う、新緑の森のような草いきれの香りがした。
「リズ、それを貸して」
「ええ、作ってくれるのね」
リズが瓶を手渡すと、ミオはリュックからさらに幾つかハーブが入った瓶を取り出し、セージとブレンドする。少し癖のあるハーブなのでカモミール等と混ぜて飲みやすくすることに。
出来上がったものを、温めたカップに注ぎテーブルに置いた。
「これが元領主の妻が飲んだハーブティよ」
「確認するけれど、毒ではないのよね」
「もちろん。ただ、セージには『ツヨン』という成分が含まれていて、これには中絶作用があると言われているから妊娠初期の方には出さないわ」