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 しかし、そんな毎日の繰り返しの中でも、わたしの胸には希望の光が燃えていた。
 わたしには使命があった。子供十字軍の活動は終わったけれども、世の中にはまだまだわたしたちのような存在を必要としている子供がいる。
 わたしはいくつものプランを考えて過ごした。ということで、まずはキョウコさんに相談してみた。
 キョウコさんは大学の法学部を卒業し、ヒダカ老人の弟さん、つまりリョウジさんの法律事務所で働き出していたからだ。
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「いったい何を考えてるの?」
 わたしがそのプランを発表すると、キョウコさんはまずそう言った。
「だから完全な家族にしたいんです」
「七十人を? しかも子供たちだけの?」
 ちなみにあれからまた家族が増えていた。出て行った子供たちもいるけれど、わたしたちの噂を聞きつけて集まってくる子供たちも増えていた。
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「そうです。大人たちに邪魔されることなく、子供たちが自立してさらに小さい子供たちを育てていけるようにする。そういう大きな家族を作りたいんです」
「ムリね」
「たとえばみんなを僕の養子ということにするとか」
「ムチャね」
「たとえば会社を作って、子供たちがみんな社員になるとか」
「ムボウね」
「そこをなんとかなりませんかね?」
「絶対ムリ。どれもやりようがないわね。まずあたしたちに社会的な信用がないし、あんただって未成年なんだから」
 相変わらず厳しいようだが、キョウコさんが言うのだから、まぁそのとおりなのだろう。大人たちから見れば、わたしたちはまだまだムニャムニャなのだ。
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「じゃあ、いったいどうしたらいいんでしょう?」
「できることをやるだけよ。今までどおり子供たちを助けていく。みんなを助けて、彼らがひとり立ちできるように援助する。わたしたちにできるのはそれだけよ」
「そうですか……それしかできないのかな、やっぱり」
「あのね、それをやるのが大変なのよ。分かってる? レンジ、あんたはケンとコトラと三人でずっとそうしてきたんだよ。それってすごいことなんだよ。あんたたちのおかげで救われた子供がどれだけいることか。あたしはそれってすごいことだと思ってるよ」
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「あたしはね、人間って何でもできるわけじゃないと思うの。頑張ったってできない事だってたくさんある。でもね、それでも頑張るって事が大事だと思うのよ。あたしはよく、背伸びするところまで頑張ろう、って思うの。普通に手を伸ばしたところまで頑張るのは誰にでもできることでしょ、だけど背伸びをするところまで、わたしはがんばるようにしてるの。でもそれ以上はがんばらない。だって足が離れてしまったら立っていることもできなくなるでしょ? あんたは今、背伸びをしすぎてるのよ。それじゃ転んじゃうよ」
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「なるほど……なんか奥が深いですね」
「でしょ? 実はおじいちゃんの受け売りなの。でもこれで結構うまくいくんだよ。さて、そろそろ時間だね」
 キョウコさんはカバンを持って立ち上がった。ちなみにこの頃のキョウコさんはスーツ姿が多かった。その日は黒のパンツスーツにキャメルのコート、持っているバッグは革だった。じつに颯爽として見える。
「あ、そういえばさ、あたし、ケンと結婚することにしたわ。式は挙げないつもり。あたしが正式に就職してからだから、二年後くらいになると思うけど、あんたの出所は間に合わないと思う。じゃね、バーイ!」
 後ろ手に手を振りながら、突然そんな事を言うのだった。
「ええっ!」
 わたしは思わず絶叫した。おめでとうとか、なんとか言うはずだったのだが、あまりの衝撃にそれしか口にできなかった。
 が、どちらにしてもその絶叫も届いていなかったろう。キョウコさんはとっくに扉を閉めていた。
 やれやれ……この人は相変わらずだ。

 ~ 獄中からのレポート 終わり ~