私──ミレイア・ミレスタとマデリーン校長、そしてフレデリカの、不穏な対話は続く──。
フレデリカは「フフッ」と笑った。
「来年から、あなたたちのスコラ・シャルロはなくなります。スコラ・シャルロの生徒は、我がスコラ・エンジェミアの生徒になる。全員、漏《も》れなく。そう申し上げているのです」
「バカな!」
マデリーン校長は、机をバンと叩いた。
「子どものたわごとも、ほどほどにしなさい!」
「たわごとではありませんよ、マデリーン校長」
フレデリカは恐れず言った。私は、フレデリカが大変なことを言っていると思った。
「あなたたちの学校、スコラシャルロの生徒の500名は、スコラ・エンジェミアの生徒になります。これは聖女協会副会長の私──フレデリカ・レイリーンに決定権が与えられ、決めたこと。他の学校も同様です」
「バカを言わないで!」
マデリーン校長は怒鳴った。
「なぜ、そんなことを決定したの?」
「先程も申し上げたとおり、この世は魔族に支配されるからです。そのとき重要なのが、若い勇者や聖女候補たちです。最高の聖女養成学校である、スコラ・エンジェミアが、この世界すべての勇者・聖女養成学校を指導しなければ、魔族に対抗できません」
「何を勝手な!」
「そのすべての『指導』は、私、フレデリカ・レイリーンが行います」
「指導ですって? 17歳のあなたが?」
マデリーン校長は、呆れたような顔をした。
「あなたには人を思いやる『愛』がないわ。人を指導する資格がない! 愛があれば、他の学校を潰そうをしたり、自分の支配下、監視下におく、なんて発想はできないはず!」
「愛……? 幻想ですよ、そんなものは存在しない」
17歳の少女はクスクス笑いながら、ハエを追い払うような仕草をした。
「スコラ・エンジェミアの支配下になった学校の生徒は、私の駒になってくれるでしょう」
「な、何を言っているの? あなたは」
「人間は、頭の良い人間の指示に従い、効率的に動けば良いのです!」
「それは教育ではない! フレデリカ、若いあなたが教育を実践するのは、早すぎる」
マデリーン校長は興奮しながら言ったが、フレデリカは冷淡に返した。
「出来の悪い人間は、切り捨てておけば良いんですよ。出来の悪い──簡単にいえば、私の方針に従わない、バカな人間どもです。まあ、強引にでも従わせますよ。それでもダメだったら、どこかへ追放してしまえば良い」
これが17歳の少女の発言なのか。
私は困惑していた。
フレデリカは勝ち誇ったように、冷たい目で私たちを見ていた。
しかし、マデリーン校長が口を開いた。
「なるほど、今の意見をまとめれば、スコラ・エンジェミアの生徒が、スコラ・シャルロの生徒より優れている──そういう前提なのね」
「……何をおっしゃりたいんですか?」
フレデリカはピクリとマデリーン校長を見た。マデリーン校長は冷静に続けた。
「では、スコラ・エンジェミアの生徒を、スコラ・シャルロの生徒が全国魔法競技会で倒せばどうなるかしら。立場は逆転するわね」
「……ありえない!」
フレデリカはクスクスッと笑って叫んだ。しかし、頬はピクピクッと震えていた。
「最上級の聖女養成学校、スコラ・エンジェミアが、他校の生徒に敗北することは考えられない。ありえません!」
「ありえるわよ」
マデリーン校長は、きっぱり言った。私は驚いた顔で、マデリーン校長を見た。まさか、秘策が?
「ここにいるミレイア・ミレスタが」
え? 私? マデリーン校長は話を続ける。
「あなたたち、スコラ・エンジェミアの生徒を打ち倒すでしょうから」
「……アッハッハ!」
フレデリカは手を叩いて笑っている。
「バカな! 我がスコラ・エンジェミアが、他校に後れをとるなどっ……!」
「フレデリカさん。あなた自身が、ここにいるミレイアに負けるのよ」
「は……」
フレデリカの笑顔が消えた。
「ふふん……そうですか! 私をね……。エンジェミアの聖女……つまり聖女王を除き、全世界の聖女の頂点である私が、ミレイアに倒されると」
「そうよ」
「これは戦争だ!」
フレデリカは突然、声を荒げた。
ギリリッ……
彼女の歯ぎしりの音も聞こえてきた。
「あなた方を潰すっ……! 手加減はできませんよ。マデリーン校長、そしてミレイア! マンフレッド教頭、時間がきたようですね」
「はっ」
後ろに立っていたマンフレッド教頭は、「では、フレデリカ様は聖女の職務があるので、会議は終了です」と言った。
「帰りましょ」
マデリーン校長は立ち上がった。私もあわてて立ち上がった。
フレデリカを見ると、すさまじい眼光で、私たちをにらみつけているのだった。
(これは戦争だ!)
フレデリカの言葉が、私の心を握りしめているようだった。
全国学生魔法競技会……これは学校の存亡をかけた戦いになるはずだ!
フレデリカは「フフッ」と笑った。
「来年から、あなたたちのスコラ・シャルロはなくなります。スコラ・シャルロの生徒は、我がスコラ・エンジェミアの生徒になる。全員、漏《も》れなく。そう申し上げているのです」
「バカな!」
マデリーン校長は、机をバンと叩いた。
「子どものたわごとも、ほどほどにしなさい!」
「たわごとではありませんよ、マデリーン校長」
フレデリカは恐れず言った。私は、フレデリカが大変なことを言っていると思った。
「あなたたちの学校、スコラシャルロの生徒の500名は、スコラ・エンジェミアの生徒になります。これは聖女協会副会長の私──フレデリカ・レイリーンに決定権が与えられ、決めたこと。他の学校も同様です」
「バカを言わないで!」
マデリーン校長は怒鳴った。
「なぜ、そんなことを決定したの?」
「先程も申し上げたとおり、この世は魔族に支配されるからです。そのとき重要なのが、若い勇者や聖女候補たちです。最高の聖女養成学校である、スコラ・エンジェミアが、この世界すべての勇者・聖女養成学校を指導しなければ、魔族に対抗できません」
「何を勝手な!」
「そのすべての『指導』は、私、フレデリカ・レイリーンが行います」
「指導ですって? 17歳のあなたが?」
マデリーン校長は、呆れたような顔をした。
「あなたには人を思いやる『愛』がないわ。人を指導する資格がない! 愛があれば、他の学校を潰そうをしたり、自分の支配下、監視下におく、なんて発想はできないはず!」
「愛……? 幻想ですよ、そんなものは存在しない」
17歳の少女はクスクス笑いながら、ハエを追い払うような仕草をした。
「スコラ・エンジェミアの支配下になった学校の生徒は、私の駒になってくれるでしょう」
「な、何を言っているの? あなたは」
「人間は、頭の良い人間の指示に従い、効率的に動けば良いのです!」
「それは教育ではない! フレデリカ、若いあなたが教育を実践するのは、早すぎる」
マデリーン校長は興奮しながら言ったが、フレデリカは冷淡に返した。
「出来の悪い人間は、切り捨てておけば良いんですよ。出来の悪い──簡単にいえば、私の方針に従わない、バカな人間どもです。まあ、強引にでも従わせますよ。それでもダメだったら、どこかへ追放してしまえば良い」
これが17歳の少女の発言なのか。
私は困惑していた。
フレデリカは勝ち誇ったように、冷たい目で私たちを見ていた。
しかし、マデリーン校長が口を開いた。
「なるほど、今の意見をまとめれば、スコラ・エンジェミアの生徒が、スコラ・シャルロの生徒より優れている──そういう前提なのね」
「……何をおっしゃりたいんですか?」
フレデリカはピクリとマデリーン校長を見た。マデリーン校長は冷静に続けた。
「では、スコラ・エンジェミアの生徒を、スコラ・シャルロの生徒が全国魔法競技会で倒せばどうなるかしら。立場は逆転するわね」
「……ありえない!」
フレデリカはクスクスッと笑って叫んだ。しかし、頬はピクピクッと震えていた。
「最上級の聖女養成学校、スコラ・エンジェミアが、他校の生徒に敗北することは考えられない。ありえません!」
「ありえるわよ」
マデリーン校長は、きっぱり言った。私は驚いた顔で、マデリーン校長を見た。まさか、秘策が?
「ここにいるミレイア・ミレスタが」
え? 私? マデリーン校長は話を続ける。
「あなたたち、スコラ・エンジェミアの生徒を打ち倒すでしょうから」
「……アッハッハ!」
フレデリカは手を叩いて笑っている。
「バカな! 我がスコラ・エンジェミアが、他校に後れをとるなどっ……!」
「フレデリカさん。あなた自身が、ここにいるミレイアに負けるのよ」
「は……」
フレデリカの笑顔が消えた。
「ふふん……そうですか! 私をね……。エンジェミアの聖女……つまり聖女王を除き、全世界の聖女の頂点である私が、ミレイアに倒されると」
「そうよ」
「これは戦争だ!」
フレデリカは突然、声を荒げた。
ギリリッ……
彼女の歯ぎしりの音も聞こえてきた。
「あなた方を潰すっ……! 手加減はできませんよ。マデリーン校長、そしてミレイア! マンフレッド教頭、時間がきたようですね」
「はっ」
後ろに立っていたマンフレッド教頭は、「では、フレデリカ様は聖女の職務があるので、会議は終了です」と言った。
「帰りましょ」
マデリーン校長は立ち上がった。私もあわてて立ち上がった。
フレデリカを見ると、すさまじい眼光で、私たちをにらみつけているのだった。
(これは戦争だ!)
フレデリカの言葉が、私の心を握りしめているようだった。
全国学生魔法競技会……これは学校の存亡をかけた戦いになるはずだ!