スコラ・シャルロ魔法競技会決勝翌日。
私──ミレイア・ミレスタは優勝し、スコラ・シャルロの生徒の前に立っている。
朝の朝礼だ。
『見事な試合を見せてくれた、優勝者ミレイア・ミレスタに【祝福の万歳三唱】をしよう!』
教頭のボラージン先生が、魔導拡声器で声を上げた。60代の口ひげを生やした先生だ。
『万歳! 万歳! バンザーイ!』
ボラージン先生が声を上げると、生徒たちも喜んで万歳をしている。
(盛り上がってるのね……)
私はちょっと照れた。皆が私を見ている。
ナギトやゾーヤ、ランベールも参加者として、生徒たちの前に一緒に立ち並んでいた。
生徒のなかに、ジェニファーとゲオルグの姿はない。今日は休みか……。
『そして、ミレイアは世界学生魔法競技会の出場選手となった!』
ドヨヨヨヨヨッ
生徒たちが騒然となる。
「ほ、本当か?」
「うちの学校から? 創立以来、初めてじゃないか?」
「すごい……名誉あることだ」
私は隣に立ち並んでいるナギトに聞いた。
「世界学生魔法競技会って何? スコラ・シャルロ魔法競技会と何がちがうの?」
「お前なぁ、何も知らねえんだな。シャルロ国民の、国民的行事だぞ」
ナギトは呆れたように言うと、ランベールが説明してくれた。
「世界学生魔法競技会は、この世界のすべての学生から選抜し、学生の最高の聖女、術師、魔法使いを決定する競技会なのだ」
ランベールは説明してくれた。そして私を見やりながら言った。
「とても名誉なことだ……。我がスコラ・シャルロから、世界学生魔法競技会の選抜選手が出るとは」
「すげーじゃん、ミレイア!」
ゾーヤも笑っている。なんだかすごいことなんだろうが、私にはまだよく理解できない。
そしてボラージン先生が言った。
『また、ミレイアが世界学生魔法競技会に選抜されたことにより、我々は、【保養地区オーマシェリ】に修学旅行ができることになった』
ドオオオオオオオオッ
今日、一番盛り上がったのが、この言葉だった。
「すげえ! オーマシェリに修学旅行だって!」
「俺ら、なんて幸運なんだ?」
「メチャクチャ楽しみ~!」
生徒たちの歓声が上がる。
『オーマシェリへの修学旅行は、7月20日から4泊5日だ。他校の生徒も同日に来るので、問題を起こさぬようにな』
教頭先生はそう言いつつ、朝礼台を降りた。
「マジかぁ! 最高じゃん、オーマシェリに修学旅行なんてさ」
ゾーヤが私の肩を抱き寄せたが、私はさっぱり理解できない。私が、「オーマシェリって何?」と首を傾げていると、ゾーヤが説明してくれた。
「オーマシェリは隣国シティンドにある。大統領とか政治家とか、大貴族、王族がよく行く場所なんだ。温泉や遊技場、カジノ、海、山、キャンプ場……本当に何でもある」
「へえ……すごいのね」
「一般人は絶対に入れないが、世界学生魔法競技会の参加者と、その学校の生徒は入れるってわけさ」
ゾーヤはうれしそうに言った。
私はずっと聖女の仕事ばかりしていたせいで、本当に世間知らずだ。
「修学旅行は、他の学校でも7月20日からと決められているらしいな」
ナギトがつぶやいた。
「他の選抜者もオーマシェリに来るはずだ」
「え~?」
ゾーヤは眉をひそめた。
「なんか危険な感じするなぁ……他の学校のヤツら」
◇ ◇ ◇
1ヶ月後、修学旅行当日──。
私たちスコラ・シャルロの2年生は、中央都市のパルカサ駅のホームにいた。そこから汽車に乗って、オーマシェリに行く。1年生も一緒だ。全員で、約150名もいる。
ちなみに3年生は、将来の進路を決める大事な期末テストがあり、9月に修学旅行、ということになった。
「なぁ、オーマシェリに着いたらさぁ」
ゾーヤがうれしそうに私に言った。
「さっそく、一緒に温泉に入ろう!」
「いいわね」
すると……。
「ねえ、あんた、ミレイア先輩って人だっけ?」
後ろから女子の声がした。
「こないだの魔法競技会、優勝したんだって? あたし、試合は観てないけどさ」
私が振り返ると、そこには髪の毛を真っ赤に染めた女子が立っていた。スカートは短く、制服を着崩していて、見るからに不良少女だ。2人の女子生徒を引き連れている。
「あたし、ファビオラ・マネカってんだけど~」
彼女──ファビオラの制服のバッジを見ると、1ーAと刻印されている。1年生か。下級生だ。
「ミレイア先輩さ~、どんだけ強いの?」
ファビオラはニヤニヤしながら、私をにらみつけた。目はつりあがっていて、いかにも意地悪そうな顔だ。
「私はケンカは好まないわ」
私がきっぱり言うと、ファビオラはチッと舌打ちした。
「カワイコぶってんじゃねーよ! あ~、そういう人? あたしが一番ムカつく性格だわ」
取り巻きの2名の下級生たちも、「そ、そうよ」とはやしたてた。
「おい、あんたら、やめろって。ミレイアが何したってんだよ」
ゾーヤが間に入ってきた。
そのときちょうど、汽車が駅のホームに来た。ファビオラはなおもつっかかる。
「ミレイア先輩、今度、術と魔法で勝負しましょうよ~。あたしが勝ったら、あんたはあたしのパシリってことで」
「それはムリね」
私はあっさり言った。
「あなたでは私に勝つのはムリ」
「なに……この!」
「オラー! 何をさわいでいるんだ!」
担任のグラーズン先生が私たちに注意した。
「はやく汽車に乗り込め!」
「はーい、わっかりましたー」
ファビオラはそう言いつつ、さっさと汽車に乗ってしまった。
ゾーヤは、「生意気な下級生もいるさ」と言った。
「そうね」
私はため息をつきながら言った。
そういえば、ジェニファーはどうしたんだろう? 修学旅行には来ていないようだ。ゲオルグもいない。
私はそんなことを考えながら、保養地オーマシェリ行きの汽車に乗り込んだ。
私──ミレイア・ミレスタは優勝し、スコラ・シャルロの生徒の前に立っている。
朝の朝礼だ。
『見事な試合を見せてくれた、優勝者ミレイア・ミレスタに【祝福の万歳三唱】をしよう!』
教頭のボラージン先生が、魔導拡声器で声を上げた。60代の口ひげを生やした先生だ。
『万歳! 万歳! バンザーイ!』
ボラージン先生が声を上げると、生徒たちも喜んで万歳をしている。
(盛り上がってるのね……)
私はちょっと照れた。皆が私を見ている。
ナギトやゾーヤ、ランベールも参加者として、生徒たちの前に一緒に立ち並んでいた。
生徒のなかに、ジェニファーとゲオルグの姿はない。今日は休みか……。
『そして、ミレイアは世界学生魔法競技会の出場選手となった!』
ドヨヨヨヨヨッ
生徒たちが騒然となる。
「ほ、本当か?」
「うちの学校から? 創立以来、初めてじゃないか?」
「すごい……名誉あることだ」
私は隣に立ち並んでいるナギトに聞いた。
「世界学生魔法競技会って何? スコラ・シャルロ魔法競技会と何がちがうの?」
「お前なぁ、何も知らねえんだな。シャルロ国民の、国民的行事だぞ」
ナギトは呆れたように言うと、ランベールが説明してくれた。
「世界学生魔法競技会は、この世界のすべての学生から選抜し、学生の最高の聖女、術師、魔法使いを決定する競技会なのだ」
ランベールは説明してくれた。そして私を見やりながら言った。
「とても名誉なことだ……。我がスコラ・シャルロから、世界学生魔法競技会の選抜選手が出るとは」
「すげーじゃん、ミレイア!」
ゾーヤも笑っている。なんだかすごいことなんだろうが、私にはまだよく理解できない。
そしてボラージン先生が言った。
『また、ミレイアが世界学生魔法競技会に選抜されたことにより、我々は、【保養地区オーマシェリ】に修学旅行ができることになった』
ドオオオオオオオオッ
今日、一番盛り上がったのが、この言葉だった。
「すげえ! オーマシェリに修学旅行だって!」
「俺ら、なんて幸運なんだ?」
「メチャクチャ楽しみ~!」
生徒たちの歓声が上がる。
『オーマシェリへの修学旅行は、7月20日から4泊5日だ。他校の生徒も同日に来るので、問題を起こさぬようにな』
教頭先生はそう言いつつ、朝礼台を降りた。
「マジかぁ! 最高じゃん、オーマシェリに修学旅行なんてさ」
ゾーヤが私の肩を抱き寄せたが、私はさっぱり理解できない。私が、「オーマシェリって何?」と首を傾げていると、ゾーヤが説明してくれた。
「オーマシェリは隣国シティンドにある。大統領とか政治家とか、大貴族、王族がよく行く場所なんだ。温泉や遊技場、カジノ、海、山、キャンプ場……本当に何でもある」
「へえ……すごいのね」
「一般人は絶対に入れないが、世界学生魔法競技会の参加者と、その学校の生徒は入れるってわけさ」
ゾーヤはうれしそうに言った。
私はずっと聖女の仕事ばかりしていたせいで、本当に世間知らずだ。
「修学旅行は、他の学校でも7月20日からと決められているらしいな」
ナギトがつぶやいた。
「他の選抜者もオーマシェリに来るはずだ」
「え~?」
ゾーヤは眉をひそめた。
「なんか危険な感じするなぁ……他の学校のヤツら」
◇ ◇ ◇
1ヶ月後、修学旅行当日──。
私たちスコラ・シャルロの2年生は、中央都市のパルカサ駅のホームにいた。そこから汽車に乗って、オーマシェリに行く。1年生も一緒だ。全員で、約150名もいる。
ちなみに3年生は、将来の進路を決める大事な期末テストがあり、9月に修学旅行、ということになった。
「なぁ、オーマシェリに着いたらさぁ」
ゾーヤがうれしそうに私に言った。
「さっそく、一緒に温泉に入ろう!」
「いいわね」
すると……。
「ねえ、あんた、ミレイア先輩って人だっけ?」
後ろから女子の声がした。
「こないだの魔法競技会、優勝したんだって? あたし、試合は観てないけどさ」
私が振り返ると、そこには髪の毛を真っ赤に染めた女子が立っていた。スカートは短く、制服を着崩していて、見るからに不良少女だ。2人の女子生徒を引き連れている。
「あたし、ファビオラ・マネカってんだけど~」
彼女──ファビオラの制服のバッジを見ると、1ーAと刻印されている。1年生か。下級生だ。
「ミレイア先輩さ~、どんだけ強いの?」
ファビオラはニヤニヤしながら、私をにらみつけた。目はつりあがっていて、いかにも意地悪そうな顔だ。
「私はケンカは好まないわ」
私がきっぱり言うと、ファビオラはチッと舌打ちした。
「カワイコぶってんじゃねーよ! あ~、そういう人? あたしが一番ムカつく性格だわ」
取り巻きの2名の下級生たちも、「そ、そうよ」とはやしたてた。
「おい、あんたら、やめろって。ミレイアが何したってんだよ」
ゾーヤが間に入ってきた。
そのときちょうど、汽車が駅のホームに来た。ファビオラはなおもつっかかる。
「ミレイア先輩、今度、術と魔法で勝負しましょうよ~。あたしが勝ったら、あんたはあたしのパシリってことで」
「それはムリね」
私はあっさり言った。
「あなたでは私に勝つのはムリ」
「なに……この!」
「オラー! 何をさわいでいるんだ!」
担任のグラーズン先生が私たちに注意した。
「はやく汽車に乗り込め!」
「はーい、わっかりましたー」
ファビオラはそう言いつつ、さっさと汽車に乗ってしまった。
ゾーヤは、「生意気な下級生もいるさ」と言った。
「そうね」
私はため息をつきながら言った。
そういえば、ジェニファーはどうしたんだろう? 修学旅行には来ていないようだ。ゲオルグもいない。
私はそんなことを考えながら、保養地オーマシェリ行きの汽車に乗り込んだ。