私は聖女ミレイア。勇者・聖女養成学校エクセン校のパーティー会場で、婚約者のレドリー王子に、婚約破棄を言い渡された。しかも、聖女をやめろ、と言われ、クラスメートのジェニファーには、「エクセン王国から出て行け」とも言われた……。
(このままでは、エクセン王国は滅んでしまう!)
私の結界がなくなったエクセン王国は、魔物が侵入し、滅亡するだろう! 何とかしないと!
「ジェニファー、あなたのアイデアは認めます!」
私は必死に、ジェニファーに言った。
「しかし兵士だけではかなわない、怖ろしい魔物もいるのです。きちんとした結界でなくては、魔物の侵入は防げない!」
「うるっさいのよ、この無表情女が!」
ジェニファーは声を荒げた。
「結界とか、もう古いっつーの! これからは、兵士が実際に魔物と戦う時代よ!」
「それでは、エクセン王国が大変なことになる! 結界だけは張らせてください!」
ガス!
ジェニファーは、私の足を蹴った!
「い、いたぁ……」
「生意気なのよ! いちいち、あたしに指図してんじゃないよ!」
「け、結界が無くなれば、魔物たちが侵入してきます。エクセン王国は大変なことになります」
私が必死に言うと、レドリー王子は笑って言った。
「心配は無用だ。兵士たちは久しぶりに魔物と戦えると、奮起している。それに、ジェニファーは学校の成績も1番。頭も良い。軍師になれるくらいだと思う」
(いやいやいや、それは……!)
それは学校の成績であって、このエクセン王国を守る仕事とは、ほとんど関係がない!
「さあ、ミレイア。君はもう邪魔だから、パーティー会場から出ていけ!」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「もうこの国には、聖女という役職の者はいないということになっているんだ」
レドリーは冷たく言った。
「そうそう、退職金として、君の口座には2万ルピーほど入れておいた。学生だから、そんなもんでいいだろ」
服を一着買ったら、使い切ってしまうくらいの値段。
私の価値はそんなモノだったのか。
「またイライラして、他の子の背中を蹴っ飛ばさないようにね! あんたは最悪の性格なんだからさ~。いいから、さっさと出てけ! バーカ!」
ジェニファーはケラケラ笑った。さっき、私の足を蹴っておいて、何を言っているの?
(こいつだ。私の悪い噂を流したのは)
もう、こんな国にいてもしょうがない。私は父も母も家族もいない。明日、この国を出ていこう……。
(……学校もやめて、普通の少女として旅立とう)
◇ ◇ ◇
私は、追い出されるようにして、パーティ会場を出た。
「ミレイア様!」
すると、後輩の女生徒たちが、私の後を追ってきた。
私が聖女として仕事をする時、協力してくれる女の子たちだ。3人いる。
レイラ、ユウミ、サラ……。
私と魔力の質が似ているので、2年前から、私が結界を張るときに、協力してくれるようになった。3年前は、宮殿の魔法婆様たちが、結界張りに協力してくれていた。しかし、婆様たちは、若い彼女たちにエクセン王国の将来をまかせ、私に協力するように言ったのだ。
「ミレイア様! 私たちは、あなたの結界が今まで、このエクセン王国を救ってくれていたことを、知っています!」
レイラは、そう叫んで、私を抱きしめてくれた。
「レドリーやジェニファーの言う話なんて、真に受けてはいけません。結界を作れる聖女は、絶対に、この国に必要な役職です! つまり、あなたが必要なんです、ミレイア様!」
「レイラ……」
「そうですよ!」
ユウミも声を上げた。
「レドリーやジェニファーの言っていることはおかしいです。結界があるから、今まで1匹も魔物をこの国に侵入させなかったのです。あの二人、聖女という仕事をなめていますよ!」
「ミレイア様、どうかやめないで! この国から出ていかないで!」
最も年下の15歳、サラも泣いている。私はサラの頭をなでた。
「サラちゃん、仕方ないのよ。王子のレドリーに嫌われてはね」
「でも、この国は……ほろんでしまう。ミレイア様の結界がないと……」
ユウミが心配そうに言ったが、私は宣言した。
「私は、この国で結界を張るのをやめます。でも、あなた達は、新しい指導者のレドリー王子とジェニファーのお手伝いをしなさい」
「ああ……ジェニファーではダメ。彼女は結界も張れないだろうし、兵士の指導なんて、いままでしたことがないはずです」
サラが胸の前で手を組んだ。しかし、私は叱るように言った。
「三人とも、とにかく、レドリーとジェニファーを支えておあげなさい」
「ど、どうして!」
レイラが声を上げた。
「どうして、ミレイア様は、二人をゆるすの?」
「ゆるしてなんかいませんよ」
私はきっぱり言った。
「厳しいようですが、レドリーとジェニファーは、現実を知らないといけません。これから先、この国がどうなるか、見なくてはならないのです。三人共、もし、兵士たちが魔物を防ぎきれないようなら、この国をお逃げなさい。ご家族と一緒に、逃げる準備をしておきなさい」
「ミレイア様!」
三人は、私に抱き付いた。
「私は、この国を出て行きます」
私は言った。
「そして、別の国で暮らします。三人とも、後をお願いね」
三人はすすり泣いていた。なんて可愛い女の子たちなんだろう。
私は三人を抱きしめてあげた。
私は、その日、聖女をやめた。
(このままでは、エクセン王国は滅んでしまう!)
私の結界がなくなったエクセン王国は、魔物が侵入し、滅亡するだろう! 何とかしないと!
「ジェニファー、あなたのアイデアは認めます!」
私は必死に、ジェニファーに言った。
「しかし兵士だけではかなわない、怖ろしい魔物もいるのです。きちんとした結界でなくては、魔物の侵入は防げない!」
「うるっさいのよ、この無表情女が!」
ジェニファーは声を荒げた。
「結界とか、もう古いっつーの! これからは、兵士が実際に魔物と戦う時代よ!」
「それでは、エクセン王国が大変なことになる! 結界だけは張らせてください!」
ガス!
ジェニファーは、私の足を蹴った!
「い、いたぁ……」
「生意気なのよ! いちいち、あたしに指図してんじゃないよ!」
「け、結界が無くなれば、魔物たちが侵入してきます。エクセン王国は大変なことになります」
私が必死に言うと、レドリー王子は笑って言った。
「心配は無用だ。兵士たちは久しぶりに魔物と戦えると、奮起している。それに、ジェニファーは学校の成績も1番。頭も良い。軍師になれるくらいだと思う」
(いやいやいや、それは……!)
それは学校の成績であって、このエクセン王国を守る仕事とは、ほとんど関係がない!
「さあ、ミレイア。君はもう邪魔だから、パーティー会場から出ていけ!」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「もうこの国には、聖女という役職の者はいないということになっているんだ」
レドリーは冷たく言った。
「そうそう、退職金として、君の口座には2万ルピーほど入れておいた。学生だから、そんなもんでいいだろ」
服を一着買ったら、使い切ってしまうくらいの値段。
私の価値はそんなモノだったのか。
「またイライラして、他の子の背中を蹴っ飛ばさないようにね! あんたは最悪の性格なんだからさ~。いいから、さっさと出てけ! バーカ!」
ジェニファーはケラケラ笑った。さっき、私の足を蹴っておいて、何を言っているの?
(こいつだ。私の悪い噂を流したのは)
もう、こんな国にいてもしょうがない。私は父も母も家族もいない。明日、この国を出ていこう……。
(……学校もやめて、普通の少女として旅立とう)
◇ ◇ ◇
私は、追い出されるようにして、パーティ会場を出た。
「ミレイア様!」
すると、後輩の女生徒たちが、私の後を追ってきた。
私が聖女として仕事をする時、協力してくれる女の子たちだ。3人いる。
レイラ、ユウミ、サラ……。
私と魔力の質が似ているので、2年前から、私が結界を張るときに、協力してくれるようになった。3年前は、宮殿の魔法婆様たちが、結界張りに協力してくれていた。しかし、婆様たちは、若い彼女たちにエクセン王国の将来をまかせ、私に協力するように言ったのだ。
「ミレイア様! 私たちは、あなたの結界が今まで、このエクセン王国を救ってくれていたことを、知っています!」
レイラは、そう叫んで、私を抱きしめてくれた。
「レドリーやジェニファーの言う話なんて、真に受けてはいけません。結界を作れる聖女は、絶対に、この国に必要な役職です! つまり、あなたが必要なんです、ミレイア様!」
「レイラ……」
「そうですよ!」
ユウミも声を上げた。
「レドリーやジェニファーの言っていることはおかしいです。結界があるから、今まで1匹も魔物をこの国に侵入させなかったのです。あの二人、聖女という仕事をなめていますよ!」
「ミレイア様、どうかやめないで! この国から出ていかないで!」
最も年下の15歳、サラも泣いている。私はサラの頭をなでた。
「サラちゃん、仕方ないのよ。王子のレドリーに嫌われてはね」
「でも、この国は……ほろんでしまう。ミレイア様の結界がないと……」
ユウミが心配そうに言ったが、私は宣言した。
「私は、この国で結界を張るのをやめます。でも、あなた達は、新しい指導者のレドリー王子とジェニファーのお手伝いをしなさい」
「ああ……ジェニファーではダメ。彼女は結界も張れないだろうし、兵士の指導なんて、いままでしたことがないはずです」
サラが胸の前で手を組んだ。しかし、私は叱るように言った。
「三人とも、とにかく、レドリーとジェニファーを支えておあげなさい」
「ど、どうして!」
レイラが声を上げた。
「どうして、ミレイア様は、二人をゆるすの?」
「ゆるしてなんかいませんよ」
私はきっぱり言った。
「厳しいようですが、レドリーとジェニファーは、現実を知らないといけません。これから先、この国がどうなるか、見なくてはならないのです。三人共、もし、兵士たちが魔物を防ぎきれないようなら、この国をお逃げなさい。ご家族と一緒に、逃げる準備をしておきなさい」
「ミレイア様!」
三人は、私に抱き付いた。
「私は、この国を出て行きます」
私は言った。
「そして、別の国で暮らします。三人とも、後をお願いね」
三人はすすり泣いていた。なんて可愛い女の子たちなんだろう。
私は三人を抱きしめてあげた。
私は、その日、聖女をやめた。