僕とは違い雄馬は人気者だ。
 明るく親しみやすい性格で、どんな人物とも分け隔てなく接することができる。さらに長身で顔も良いため女子からの人気もなかなかのもののようだ。それは先程や今のやり取りを見ても頷ける。
 朝練はサボり気味のようであるが、部活動は精力的にやっているようで、昨年行われた大会では400Mハードルでそれなりにいい結果を残したようだ。僕も何度か見たことがあるが、彼の走る姿はなかなか様になっており、お世辞抜きに格好の良いものだったと思う。そんなところも人気の一要因なのだろう。
 容姿も性格もよく、かつ周りとも上手く付き合えており、求められる存在。
 要するに僕とは全く違う人種ということだ。
「僕なんかとつるまなくても、もっと他にいるだろ? 友達多いんだからさ」
 まったく違う人種故にこうして並んでいると釣り合いが取れていない。こいつはもっと人気な、それこそクラスの中心にいるような奴らといる方が自然に思える。
「もしくは周りに女子とか侍らせてろよ。さっきみたいにさ」
「人聞きの悪いこと言うんじゃねぇよ!」
 僕の言葉に彼は心外だと言わんばかりに苦々しく顔を歪めた。
 そんなに嫌がることでもないだろうに、誰でもできることではないのだ。それができ、許されるというのであれば堂々とそのように振る舞い生きればいいものの、と素直に思う。
 もし彼がそのように振る舞うというのであれば、僕は心からその様に賛辞を贈るだろう。
 少なくとも自分にはできないことなのだ。それをできる彼を称賛し、拍手を送ることだろう。
 もっとも自分が彼の立場になったとしてもそのようには振る舞わないだろうが。
 僕にはとてもできない。
「俺が誰とつるもうが俺の勝手だろうが。そんなことまで周りに決められて堪るかよ」
 彼はそう言ってフンと鼻で笑った。
 果たしてそれは誰に向けられたものであったのか。僕か、それとも他の誰かか。それは分からなかった。
「俺は自分のしたいようにしているだけだよ。それとも俺が一緒にいるのは不満か?」
「いいや、全然」
 不満どころかむしろ有難いくらいだ。
「じゃあ、いいじゃないか」
「そうだな……」
 僕なりに彼のことを考えてのことだったのだが、彼自身がこれで良いというのであれば僕には異論はないし、気を遣うつもりもない。本人の望まない気遣いなどお節介にしかならない。
 それにしても
「僕の周りにはどうも僕とは釣り合いの取れない人間が集まってくるな……」
 僕の言葉に雄馬は「またそんなことを……」と再び苦々しい顔をするが無視する。事実なのだから仕方がないだろう?
 そもそも僕のようなのと釣り合いが取れる人間がどんなものなのかと言われたら困るのだが。
「俺のことはともかく、その他は誰のこと言ってんだよ?」
「ん? ああ……」
 僕がその名を口にするのを躊躇っていると、不意に右の通路から見知った顔の女子生徒が歩いてきた。
 その女子生徒は今まさに僕が思い浮かべていた人物で
「あ……」
「あ……」
「久世さん」
 僕たちの目の前に綾奈が立っている。