「ふっふふーん」
久しぶりに同年代と話せて、すっきりしたのかリーゼは鼻歌をうたいながら子供達とお遊びをする。
あの鼻歌に歌詞をつけるだけで金貨10万枚(100億)売り上げたこともあるとか……芸術とは恐ろしい。
「予定が変わってしまったな。どうする?」
「あら問題ないでしょ? リーゼがスケジュール通り動かないのはいつものことじゃない。それを前提に動かないなんてまだまだね」
「言ってくれるな。まぁいい。君と頭脳戦をした所で部が悪いのは分かっていることだ」
メリシュとアルヴァンがリーゼを見ながら話し合う。
「テトラ、資材は揃ってるんでしょう?」
「ん! 全部おっけー」
「なら早めましょう。計画は早いに越したことはないわ。リーゼがまたどこかに行かない内にね」
「そうだな。ミナ」
「はい、アルヴァン様!」
アルヴァンは副官のミナさんを呼び出し、様々な指示を始めた。
「ねぇ、ロード。聞いてる?」
「いや……知らないな。アルヴァンは何をするつもりだ」
「そうだね。さすがにママとパパに伝えないといけないな。この資料を見てくれ」
アルヴァンが冊子を俺とマリヴェラに手渡した。
なになに、魔王国最終防衛ライン製造計画N O.1
主にテトラとメリシュが協力して作り上げたようだ。
かんたんに言うと覇王国オシロスとの戦いの前に魔王国の防御機能を構築させたいらしい。
もし戦争に敗北した場合帝国は恐らく攻められる。その時の魔王国の守りの要を今の内に作っておきたいということか。
なになに、魔王国に侵入した敵の排除に機動魔導人形数百体で駆逐する。
魔王国の周りは魔功炉エネルギーを使った光波防御シールドにより砲撃の無力化。
複数の拡散魔導砲により、敵の機動兵器を牽制。
魔王国は要塞化することでN O.1の計画は完了とする。
「なんだこの夢物語は。さすがに無理だろう」
「無理ではないさ。教養の天才と魔導の天才が実現させる案として設計図を作り上げた。そして政治の天才である僕がそれに必要な資材を合法的に集めた。この意味がわかるかな」
合法。帝国摂政が合法と言えば帝国における事案は全て合法になるのだな……。
「だが金はどうする? いったいいくらかかると思ってるんだ」
「そのための金ずるがここに2人いる。希少な魔物を討伐することができる武道の天才と声を出すだけ金貨を生み出す、魅力の天才がな」
「おまえ……まさか。フィロはともかくリーゼの稼いだ金を」
「ちゃんとリーゼから許可はもらっているさ。脱税しないように僕が見張らせてもらっている」
確かにそれならこの計画の資金源になるってことがわかる。
だが……もう一つ穴がある。
「結局最後は人の手によってモノは作られるということだ。この規模。有スキル者が50人いても二ヶ月はかかるだろう。実質1年単位になりそうだな」
「さすがパパ。その試算は正しいよ」
アルヴァンの習得しているスキルの中にはそういった計算を円滑にできるものも存在する。
恩返しによりこういったものはパッシブスキルとして常時発動するものらしい。
実質の1年。覇国攻略にそれだけ時間をかけるなら最もな話だったが……、
こいつらがそんな悠長にするとは思えない。
ということは……何か仕掛けを考えているな……。
翌日、その光景に俺とマリヴェラはびっくりした。
「なんだこの人だかりは……」
ハーヴァン孤児院は高台に位置しており、丘を登るように進まなければ到達できない。
また周りは森と草原に囲まれており、見晴らしが非常に良い。
そんな丘の上から草原そって人が大勢集まっていた。
何がどうなってこんなことになったんだ。どうやってこんなに集まったんだ。
ざわざわと人が集まり相当いに騒がしい。
「2000人ほどか。思った以上に集まったな」
「ちょっとアルヴァン、これはいったいどういうことなの!?」
「アルヴァン、おまえ何をするつもりなんだ」
「簡単な話さ。昨日の話の続きさ。魔王国最終防衛ライン製造計画N O.1の問題点。パパはそれは人の数って言ったね」
それがここに集まった2000人と何が関係しているというんだ。
アルヴァンは片手を挙げた。
「サスペンションアロマを散布!」
サスペンションアロマとはメリシュが開発したちょっといい気分になれる性質を持つ芳香剤だ。
その芳香剤が孤児院の方から大量に流されて、風下にある大勢民衆に降りかかる。
次に孤児院の玄関に巨大な拡声器がぼんと置かれた。
「調整完了。リーゼお願い」
「任せてなの!」
拡声器の方からテトラとリーゼの声がきこえる。
元気いっぱいのリーゼの声の後、拡声器から声が響いた。
世界一の歌姫の歌声。その声色は感情すらも操作してしまいそうなほど情報量が込められていた。
思わず涙してしまうほどにリーゼの歌声は心を揺さぶる。
数分の後、もっと聞きたいと思いつつもリーゼの即席の歌は終わってしまった。
「やはりリーゼの生歌は素晴らしいな」
「ええ、子供のころは九九すらまともにできない子で……どうしようと思ったけど立派になったわ」
親同士、子供の成長を喜んでいるとアルヴァンやメリシュが忙しく動いていた。
「で、結局何がしたかったんだ」
「簡単な話よ。実験は大成功だわ」
「え?」
気づけばあれだけ騒がしかった2000人の民衆は黙りこくって立ち尽くしていた。
ぜんいん、一歩も動かず。虚な瞳でこちらを見ている。
「リーシュ!?」
マリヴェラが走って、民衆の所へ行ってしまう。
孤児院出身、マリヴェラの親友であるリーシュも虚な目で佇んでいた。
マリヴェラがしきりに声をかけるがまったく反応がない。
メリシュが外へ出た。
「さぁ、実験の始まりよ」
メリシュが指をならすとそれに反応して2000人の人々が列を作ってゆっくりメリシュの所へ向かう。
メリシュは医療用のグローブをはめた。
「2000人。ふっ、腕がなるわね」
メリシュが指を民衆に向けた。
「【指注射.職人肌】」
ドスドスと民衆の頭にメリシュは指を次々と突き刺していく。
民衆は一瞬、びくっとなったがやがて止まり、そのまま孤児院の中に駆け出していった。
「メリシュ、いったい何をしてるんだ!?」
「メリシュは2000人分相手にしなきゃいけないから僕が説明しよう」
アルヴァンの声に俺もマリヴェラも耳を傾ける。
「メリシュのスキル【脳操作】を使ってあの民衆に魔導機器生産の技術を脳に埋め込んでいるんだ」
「脳操作!?」
マリヴェラは驚くが、俺は知っている。恩返しスキルで習得したのでああ、なんかやべぇスキル習得したなぁという思いだった。
メリシュは医者でもあるから必要なスキルと思っていたが今、思うとなんかずれてるような気がする。
「サスペションアロマには脳操作を円滑に行う麻酔成分が含まれている」
「ちょっと待て、ってことは世界中に売り出されてるアレは」
「そうだよ。メリシュがしかるべき時に世界中の人間を【脳操作】しやすいように今のうちに仕込ませてもらっている。アロマはベストセラーになったからその内、一家に一台となるだろう」
「今はまだ今回のように散布する必要があるから……実用的になるのはまだ先だね」
「表向きは医療用、裏向きは人心掌握ってところか」
「ご名答。世界はメリシュの思うがままになる日が来るかもしれない。なんてね」
なんという壮大な計画。バレたら確実に危険な薬物を広めてるってことでメリシュが討伐されかねない。
帝国を我が物にするアルヴァン。星のエネルギーを消費続ける魔功炉を作ったテトラ。そして世界中の人々の精神をコントロールしようとしているメリシュ。
どいつもこいつも物語だったら敵みたいな動きしやがって……。
どんな育て方したのか親の顔が見てみてーわ!
「リーゼの歌声で夢心地となって、メリシュの指パッチンで完全に掌握って所か」
「だからリーゼの歌声を拡声器で広めたのね」
「【脳操作】スキルを使って技術を埋め込む。今、2000人の職人が生まれたということか。2000人を何日拘束するつもりだ。脳操作なんてできて精々1日だろう。まさか1日で孤児院の防衛設備を全て作り終えるわけが……。
「そのまさかだよ」
「え、え? ごめんなさい。私頭が悪いからあんまりわからないんだけど、できるものなの?」
「いや、さすがに正攻法じゃ無理だ。昨日も言ったがあの設備だと職人100人で八ヶ月は工期が必要と思っている」
「そうだね。ちなみに動作確認、試運転はテトラ、ペリルに任せるとしてやはりネックは設備の生産だ。これは時間と口数をかければ何とかなるものなんだ。
八ヶ月の試算は一級の職人100人がミスなく、1日8時間、八ヶ月働く。でいいんだよね?」
「まぁざっくりだけどな」
「ならばあの民衆には1日24時間働いてもらおう。そうすれば3倍早く進む。240日が80日となる」
「無茶苦茶だろ!?」
「メリシュの脳操作のスキルに合わせてパパやママに飲ませた薬の簡易版、1日体力絶対減らないお薬と能力の限界突破できるお薬を指注射スキルで注入。これで80日が40日になる。
さらにアルヴァンが続け、同時に手をあげる。
するとリーゼの歌声が拡声器を通じて広がった。
その声に民衆が反応している。
「リーゼちゃんの歌声」
「リーゼちゃんの歌声」
「リーゼちゃんの歌声」
民衆がぶつぶつと呟き始めた。
「こえーーよ!」
「リーゼの歌声には不思議な力が込めらている。生歌が一番だが録音再生でも能力を倍増させるレベルの効果があることが分かった。なので24時間、リーゼの歌声を聞かせることで40日が20日となる。つまり100人で20日かかる仕事を2000人いれば1日でできるということだ」
それはさすがに……。だが民衆達は気合いを入れて仕事に取り組み始めている。
図面が頭に入っているのか凄まじい勢いで機器を組み立てている。
力が強化されているから指でビスを締めて、適正トルクで配線をしめてやがる。
指の力ヤバすぎない!?
資材さえあれば理論上は一日で設備が完成する……それは間違いない。
だが……。
「俺はこのやり方を認めない」
「そうね、私も同感だわ」
久しぶりに同年代と話せて、すっきりしたのかリーゼは鼻歌をうたいながら子供達とお遊びをする。
あの鼻歌に歌詞をつけるだけで金貨10万枚(100億)売り上げたこともあるとか……芸術とは恐ろしい。
「予定が変わってしまったな。どうする?」
「あら問題ないでしょ? リーゼがスケジュール通り動かないのはいつものことじゃない。それを前提に動かないなんてまだまだね」
「言ってくれるな。まぁいい。君と頭脳戦をした所で部が悪いのは分かっていることだ」
メリシュとアルヴァンがリーゼを見ながら話し合う。
「テトラ、資材は揃ってるんでしょう?」
「ん! 全部おっけー」
「なら早めましょう。計画は早いに越したことはないわ。リーゼがまたどこかに行かない内にね」
「そうだな。ミナ」
「はい、アルヴァン様!」
アルヴァンは副官のミナさんを呼び出し、様々な指示を始めた。
「ねぇ、ロード。聞いてる?」
「いや……知らないな。アルヴァンは何をするつもりだ」
「そうだね。さすがにママとパパに伝えないといけないな。この資料を見てくれ」
アルヴァンが冊子を俺とマリヴェラに手渡した。
なになに、魔王国最終防衛ライン製造計画N O.1
主にテトラとメリシュが協力して作り上げたようだ。
かんたんに言うと覇王国オシロスとの戦いの前に魔王国の防御機能を構築させたいらしい。
もし戦争に敗北した場合帝国は恐らく攻められる。その時の魔王国の守りの要を今の内に作っておきたいということか。
なになに、魔王国に侵入した敵の排除に機動魔導人形数百体で駆逐する。
魔王国の周りは魔功炉エネルギーを使った光波防御シールドにより砲撃の無力化。
複数の拡散魔導砲により、敵の機動兵器を牽制。
魔王国は要塞化することでN O.1の計画は完了とする。
「なんだこの夢物語は。さすがに無理だろう」
「無理ではないさ。教養の天才と魔導の天才が実現させる案として設計図を作り上げた。そして政治の天才である僕がそれに必要な資材を合法的に集めた。この意味がわかるかな」
合法。帝国摂政が合法と言えば帝国における事案は全て合法になるのだな……。
「だが金はどうする? いったいいくらかかると思ってるんだ」
「そのための金ずるがここに2人いる。希少な魔物を討伐することができる武道の天才と声を出すだけ金貨を生み出す、魅力の天才がな」
「おまえ……まさか。フィロはともかくリーゼの稼いだ金を」
「ちゃんとリーゼから許可はもらっているさ。脱税しないように僕が見張らせてもらっている」
確かにそれならこの計画の資金源になるってことがわかる。
だが……もう一つ穴がある。
「結局最後は人の手によってモノは作られるということだ。この規模。有スキル者が50人いても二ヶ月はかかるだろう。実質1年単位になりそうだな」
「さすがパパ。その試算は正しいよ」
アルヴァンの習得しているスキルの中にはそういった計算を円滑にできるものも存在する。
恩返しによりこういったものはパッシブスキルとして常時発動するものらしい。
実質の1年。覇国攻略にそれだけ時間をかけるなら最もな話だったが……、
こいつらがそんな悠長にするとは思えない。
ということは……何か仕掛けを考えているな……。
翌日、その光景に俺とマリヴェラはびっくりした。
「なんだこの人だかりは……」
ハーヴァン孤児院は高台に位置しており、丘を登るように進まなければ到達できない。
また周りは森と草原に囲まれており、見晴らしが非常に良い。
そんな丘の上から草原そって人が大勢集まっていた。
何がどうなってこんなことになったんだ。どうやってこんなに集まったんだ。
ざわざわと人が集まり相当いに騒がしい。
「2000人ほどか。思った以上に集まったな」
「ちょっとアルヴァン、これはいったいどういうことなの!?」
「アルヴァン、おまえ何をするつもりなんだ」
「簡単な話さ。昨日の話の続きさ。魔王国最終防衛ライン製造計画N O.1の問題点。パパはそれは人の数って言ったね」
それがここに集まった2000人と何が関係しているというんだ。
アルヴァンは片手を挙げた。
「サスペンションアロマを散布!」
サスペンションアロマとはメリシュが開発したちょっといい気分になれる性質を持つ芳香剤だ。
その芳香剤が孤児院の方から大量に流されて、風下にある大勢民衆に降りかかる。
次に孤児院の玄関に巨大な拡声器がぼんと置かれた。
「調整完了。リーゼお願い」
「任せてなの!」
拡声器の方からテトラとリーゼの声がきこえる。
元気いっぱいのリーゼの声の後、拡声器から声が響いた。
世界一の歌姫の歌声。その声色は感情すらも操作してしまいそうなほど情報量が込められていた。
思わず涙してしまうほどにリーゼの歌声は心を揺さぶる。
数分の後、もっと聞きたいと思いつつもリーゼの即席の歌は終わってしまった。
「やはりリーゼの生歌は素晴らしいな」
「ええ、子供のころは九九すらまともにできない子で……どうしようと思ったけど立派になったわ」
親同士、子供の成長を喜んでいるとアルヴァンやメリシュが忙しく動いていた。
「で、結局何がしたかったんだ」
「簡単な話よ。実験は大成功だわ」
「え?」
気づけばあれだけ騒がしかった2000人の民衆は黙りこくって立ち尽くしていた。
ぜんいん、一歩も動かず。虚な瞳でこちらを見ている。
「リーシュ!?」
マリヴェラが走って、民衆の所へ行ってしまう。
孤児院出身、マリヴェラの親友であるリーシュも虚な目で佇んでいた。
マリヴェラがしきりに声をかけるがまったく反応がない。
メリシュが外へ出た。
「さぁ、実験の始まりよ」
メリシュが指をならすとそれに反応して2000人の人々が列を作ってゆっくりメリシュの所へ向かう。
メリシュは医療用のグローブをはめた。
「2000人。ふっ、腕がなるわね」
メリシュが指を民衆に向けた。
「【指注射.職人肌】」
ドスドスと民衆の頭にメリシュは指を次々と突き刺していく。
民衆は一瞬、びくっとなったがやがて止まり、そのまま孤児院の中に駆け出していった。
「メリシュ、いったい何をしてるんだ!?」
「メリシュは2000人分相手にしなきゃいけないから僕が説明しよう」
アルヴァンの声に俺もマリヴェラも耳を傾ける。
「メリシュのスキル【脳操作】を使ってあの民衆に魔導機器生産の技術を脳に埋め込んでいるんだ」
「脳操作!?」
マリヴェラは驚くが、俺は知っている。恩返しスキルで習得したのでああ、なんかやべぇスキル習得したなぁという思いだった。
メリシュは医者でもあるから必要なスキルと思っていたが今、思うとなんかずれてるような気がする。
「サスペションアロマには脳操作を円滑に行う麻酔成分が含まれている」
「ちょっと待て、ってことは世界中に売り出されてるアレは」
「そうだよ。メリシュがしかるべき時に世界中の人間を【脳操作】しやすいように今のうちに仕込ませてもらっている。アロマはベストセラーになったからその内、一家に一台となるだろう」
「今はまだ今回のように散布する必要があるから……実用的になるのはまだ先だね」
「表向きは医療用、裏向きは人心掌握ってところか」
「ご名答。世界はメリシュの思うがままになる日が来るかもしれない。なんてね」
なんという壮大な計画。バレたら確実に危険な薬物を広めてるってことでメリシュが討伐されかねない。
帝国を我が物にするアルヴァン。星のエネルギーを消費続ける魔功炉を作ったテトラ。そして世界中の人々の精神をコントロールしようとしているメリシュ。
どいつもこいつも物語だったら敵みたいな動きしやがって……。
どんな育て方したのか親の顔が見てみてーわ!
「リーゼの歌声で夢心地となって、メリシュの指パッチンで完全に掌握って所か」
「だからリーゼの歌声を拡声器で広めたのね」
「【脳操作】スキルを使って技術を埋め込む。今、2000人の職人が生まれたということか。2000人を何日拘束するつもりだ。脳操作なんてできて精々1日だろう。まさか1日で孤児院の防衛設備を全て作り終えるわけが……。
「そのまさかだよ」
「え、え? ごめんなさい。私頭が悪いからあんまりわからないんだけど、できるものなの?」
「いや、さすがに正攻法じゃ無理だ。昨日も言ったがあの設備だと職人100人で八ヶ月は工期が必要と思っている」
「そうだね。ちなみに動作確認、試運転はテトラ、ペリルに任せるとしてやはりネックは設備の生産だ。これは時間と口数をかければ何とかなるものなんだ。
八ヶ月の試算は一級の職人100人がミスなく、1日8時間、八ヶ月働く。でいいんだよね?」
「まぁざっくりだけどな」
「ならばあの民衆には1日24時間働いてもらおう。そうすれば3倍早く進む。240日が80日となる」
「無茶苦茶だろ!?」
「メリシュの脳操作のスキルに合わせてパパやママに飲ませた薬の簡易版、1日体力絶対減らないお薬と能力の限界突破できるお薬を指注射スキルで注入。これで80日が40日になる。
さらにアルヴァンが続け、同時に手をあげる。
するとリーゼの歌声が拡声器を通じて広がった。
その声に民衆が反応している。
「リーゼちゃんの歌声」
「リーゼちゃんの歌声」
「リーゼちゃんの歌声」
民衆がぶつぶつと呟き始めた。
「こえーーよ!」
「リーゼの歌声には不思議な力が込めらている。生歌が一番だが録音再生でも能力を倍増させるレベルの効果があることが分かった。なので24時間、リーゼの歌声を聞かせることで40日が20日となる。つまり100人で20日かかる仕事を2000人いれば1日でできるということだ」
それはさすがに……。だが民衆達は気合いを入れて仕事に取り組み始めている。
図面が頭に入っているのか凄まじい勢いで機器を組み立てている。
力が強化されているから指でビスを締めて、適正トルクで配線をしめてやがる。
指の力ヤバすぎない!?
資材さえあれば理論上は一日で設備が完成する……それは間違いない。
だが……。
「俺はこのやり方を認めない」
「そうね、私も同感だわ」