ミナさんが来たことに対するささやかな歓迎会が食堂内で開かれる。
マリヴェラお得意の卵たっぷりのホットケーキは絶品でミナさんだけでなく、幼い子供達もまた楽しそうに食べていた。
全員にちゃんとケーキが行き渡るように見渡す。
孤児院の中で誰よりもデカイ、マイケルがケーキをむしゃむしゃ食べつくしていた。
11歳のくせにあのデカさは驚愕である。
ちなみに2階の寝室に入らないので寝るときは馬のばさしと一緒に馬小屋で寝泊まりしてもらってる。
大丈夫、あの子の強靭な肉体はどの環境下でも耐えられる。
虐待じゃないぞ。
「カイル氏、ペリル氏、もう少し食べねば大きくなれませんぞ!」
「マイケルは食べ過ぎだよ。がっつきすぎるとモテないよ」
同い年のペリルがマイケルを嗜めて、ぴたりと食が止まる。
「む、しかし、女性はよく食べる殿方に憧れるのではないのですか!」
「何事も限度だよ、限度。カイルだってよく食べるけどちゃんと節制してるでしょ」
「なぬ! そうなのですか!」
「ちゃんと規則正しく必要な栄養素を取ってるだけだよ。フィロ姉さんやメリシュ姉さんの言うことを聞けば絶対強くなれるよ」
「カイルはおねーさん達からのお気に入りだもんね」
「ぐぬう! 心に決めた相手がいるのに……美女たちとイチャイチャ。憎いでありまするぞおおお!」
「そんなことないから……」
「某と同い年はカイル氏とあの子と旅立ってしまったポーラ氏しかおらぬ。ならペリル氏! 某にも春が欲しいですぞ!」
「えー、わたしにだって選ぶ権利あるよ?」
「ガーーン」
「わたしはアルヴァンおにーさんみたいな綺麗めのお兄さんがいいなぁ。ムキムキマッチョはやだ」
「パパ! 某つらいであります! ならダイエットしまくればアルヴァン兄者みたいになれるでしょうか」
おう、すでに2.5アメリ(メートル)から無駄だと思うぞ。
まぁそのあたりは仕方ないところだ。この孤児院の男性陣はアルヴァン、カイルが飛び抜けているからな
男も女も美を好むの仕方ないのだ。
「あ、でも筋肉好き女の子結構帝国女子でいますよ」
そんな言葉で会話に入ってきたのがミナさん。
「本当でありますか!!」
「ひぃ!?」
金剛夜叉のような剛力の顔立ちで凄まれてミナさんは涙目となる。
孤児院に来た子供達みんなマイケルの顔を見て泣くんだけど、1年ぐらい経つと慣れて軽口も叩けるようになる。
おかげで大人の男性にも物怖じしなくなるのでいい経験にもなる。
「やはり某、もっと食べて修行するであります!」
軽口を叩ける理由が単純な精神構造なんだよな。それもいいところだし、子供らしくてかわいいとは思う。
「なんだミナさん、アルヴァンやカイルみたいな美青年がお気に入りだと思ってたけど」
「そういうわけではないですよ。でも本来の好みであればロードさんのようなお父さんらしい方が素敵だと思います」
「お、嬉しいこと言ってくれるじゃないか」
「私、5歳の頃に父を亡くしているので、今日のロードさんに案内してもらった時にお父さんに案内してもらってるみたいで楽しかったんですよ」
「そうか……」
「昔はよく頭を撫でてくれたんです。優しい父でした」
良い子じゃないか。アルヴァンを支えてくれてるし、子供達にも偏見なく接してくれている。
ミナさんが来てくれて本当によかった。
お礼の気持ちと父親らしいことがしたきてつい……ミナさん、頭を撫でてしまった。
きゃっと淡い声を出すが嫌がらず受け入れてくれる。
「な、なんだか照れますね」
「俺からすれば19歳なんて子供みたいなものさ」
「あ、この撫でいいかも……私にはアルヴァン様が、っ!?」
ミナさんがマイケルに凄まれた以上に怯えた表情を見せたためゆっくりと振り向くと……、黒いオーラを出している3人の女の子がこちらを見ていた。
「私のパパに手を出すとはいい度胸ですね」
「ほんと。途中からのいいとこ取りは許さない」
「私、卒院してから1度も撫でられてないのよ。そんなメス猫は去勢しないといけないわね」
フィロ、テトラ、メリシュの3人がメラメラ燃え上がっていた。
いろいろ言いたいことがあるが、もっと恐ろしいのはその後ろにいる魔王。
「へぇ、ロードはやっぱり若い子が好きなのねぇ。ふーん」
まるで親玉ような雰囲気を出すマリヴェラの姿に俺もミナさんも怖気ついてしまう。
何をそんなに怒っているのかまったく理解できないのがまずい。
このまま怒らせたままだと俺の晩飯が雑草になってしまう!
「いやいやいや、お、恐れ多いです! ロードさんがすごくかっこいいなと思っただけで!」
「へぇ」
マリヴェラの声はまだ怖い。
「ロードさんにお似合いなのはマリヴェラさんって分かってますので! 安心してください!」
「え!? そ、そんなことないわよ、うふふ~~」
黒いオーラが消え去って照れっ照れになってしまった!
マリヴェラは頬に両手をあててくねくねと動き出してしまった。
「もう、ミナさん。あなたいい子ね!」
「あ、ありがとうございます。ふぅ……」
一難去ったようにミナさんは息を吐く。
魔王のマリヴェラがOKを出すのであればフィロ達も何も言えやしない。
「ねぇ、ロード。外から見ても私たちってお似合い」
「ああ、家族だもんな! 俺もマリヴェラも子供達も家族として大事に思ってるぞ!」
「ロード、やっぱりあなたの今日の晩御飯は雑草のフルコースね」
「なんでだ!?」
◇◇◇
くっそ。本当に皿に雑草を乗せられるとは……。
ばさしちゃんの食べ残しよと魔眼の瞳で言われてたらもはや俺に逆らう気力など出るはずもない。
今日はなんか精神的に疲れた。
メリシュの薬は体力は強化するけど、精神面は強くしてくれないんだよな。
院長室の奥の寝室のベッドに腰かけた。
そして気づく。
背の先まで長く伸びた黄金の髪に俺の時間はわずかに止まった。
そのあまりに美しい金の髪に心を奪われてしまったのだ。
「うぅん……」
その娘は寝返りをうつ。
美しかった。ただ美しかった。
鼻筋が通ってるとか、小顔とか、顔のパーツが整っているとかそんな言葉では表せないほどのその女の子は美しいのだ。
そう、19歳の世代、最後の1人、エクスリーゼ・ハーヴァンはとにかく美しかった。
マリヴェラお得意の卵たっぷりのホットケーキは絶品でミナさんだけでなく、幼い子供達もまた楽しそうに食べていた。
全員にちゃんとケーキが行き渡るように見渡す。
孤児院の中で誰よりもデカイ、マイケルがケーキをむしゃむしゃ食べつくしていた。
11歳のくせにあのデカさは驚愕である。
ちなみに2階の寝室に入らないので寝るときは馬のばさしと一緒に馬小屋で寝泊まりしてもらってる。
大丈夫、あの子の強靭な肉体はどの環境下でも耐えられる。
虐待じゃないぞ。
「カイル氏、ペリル氏、もう少し食べねば大きくなれませんぞ!」
「マイケルは食べ過ぎだよ。がっつきすぎるとモテないよ」
同い年のペリルがマイケルを嗜めて、ぴたりと食が止まる。
「む、しかし、女性はよく食べる殿方に憧れるのではないのですか!」
「何事も限度だよ、限度。カイルだってよく食べるけどちゃんと節制してるでしょ」
「なぬ! そうなのですか!」
「ちゃんと規則正しく必要な栄養素を取ってるだけだよ。フィロ姉さんやメリシュ姉さんの言うことを聞けば絶対強くなれるよ」
「カイルはおねーさん達からのお気に入りだもんね」
「ぐぬう! 心に決めた相手がいるのに……美女たちとイチャイチャ。憎いでありまするぞおおお!」
「そんなことないから……」
「某と同い年はカイル氏とあの子と旅立ってしまったポーラ氏しかおらぬ。ならペリル氏! 某にも春が欲しいですぞ!」
「えー、わたしにだって選ぶ権利あるよ?」
「ガーーン」
「わたしはアルヴァンおにーさんみたいな綺麗めのお兄さんがいいなぁ。ムキムキマッチョはやだ」
「パパ! 某つらいであります! ならダイエットしまくればアルヴァン兄者みたいになれるでしょうか」
おう、すでに2.5アメリ(メートル)から無駄だと思うぞ。
まぁそのあたりは仕方ないところだ。この孤児院の男性陣はアルヴァン、カイルが飛び抜けているからな
男も女も美を好むの仕方ないのだ。
「あ、でも筋肉好き女の子結構帝国女子でいますよ」
そんな言葉で会話に入ってきたのがミナさん。
「本当でありますか!!」
「ひぃ!?」
金剛夜叉のような剛力の顔立ちで凄まれてミナさんは涙目となる。
孤児院に来た子供達みんなマイケルの顔を見て泣くんだけど、1年ぐらい経つと慣れて軽口も叩けるようになる。
おかげで大人の男性にも物怖じしなくなるのでいい経験にもなる。
「やはり某、もっと食べて修行するであります!」
軽口を叩ける理由が単純な精神構造なんだよな。それもいいところだし、子供らしくてかわいいとは思う。
「なんだミナさん、アルヴァンやカイルみたいな美青年がお気に入りだと思ってたけど」
「そういうわけではないですよ。でも本来の好みであればロードさんのようなお父さんらしい方が素敵だと思います」
「お、嬉しいこと言ってくれるじゃないか」
「私、5歳の頃に父を亡くしているので、今日のロードさんに案内してもらった時にお父さんに案内してもらってるみたいで楽しかったんですよ」
「そうか……」
「昔はよく頭を撫でてくれたんです。優しい父でした」
良い子じゃないか。アルヴァンを支えてくれてるし、子供達にも偏見なく接してくれている。
ミナさんが来てくれて本当によかった。
お礼の気持ちと父親らしいことがしたきてつい……ミナさん、頭を撫でてしまった。
きゃっと淡い声を出すが嫌がらず受け入れてくれる。
「な、なんだか照れますね」
「俺からすれば19歳なんて子供みたいなものさ」
「あ、この撫でいいかも……私にはアルヴァン様が、っ!?」
ミナさんがマイケルに凄まれた以上に怯えた表情を見せたためゆっくりと振り向くと……、黒いオーラを出している3人の女の子がこちらを見ていた。
「私のパパに手を出すとはいい度胸ですね」
「ほんと。途中からのいいとこ取りは許さない」
「私、卒院してから1度も撫でられてないのよ。そんなメス猫は去勢しないといけないわね」
フィロ、テトラ、メリシュの3人がメラメラ燃え上がっていた。
いろいろ言いたいことがあるが、もっと恐ろしいのはその後ろにいる魔王。
「へぇ、ロードはやっぱり若い子が好きなのねぇ。ふーん」
まるで親玉ような雰囲気を出すマリヴェラの姿に俺もミナさんも怖気ついてしまう。
何をそんなに怒っているのかまったく理解できないのがまずい。
このまま怒らせたままだと俺の晩飯が雑草になってしまう!
「いやいやいや、お、恐れ多いです! ロードさんがすごくかっこいいなと思っただけで!」
「へぇ」
マリヴェラの声はまだ怖い。
「ロードさんにお似合いなのはマリヴェラさんって分かってますので! 安心してください!」
「え!? そ、そんなことないわよ、うふふ~~」
黒いオーラが消え去って照れっ照れになってしまった!
マリヴェラは頬に両手をあててくねくねと動き出してしまった。
「もう、ミナさん。あなたいい子ね!」
「あ、ありがとうございます。ふぅ……」
一難去ったようにミナさんは息を吐く。
魔王のマリヴェラがOKを出すのであればフィロ達も何も言えやしない。
「ねぇ、ロード。外から見ても私たちってお似合い」
「ああ、家族だもんな! 俺もマリヴェラも子供達も家族として大事に思ってるぞ!」
「ロード、やっぱりあなたの今日の晩御飯は雑草のフルコースね」
「なんでだ!?」
◇◇◇
くっそ。本当に皿に雑草を乗せられるとは……。
ばさしちゃんの食べ残しよと魔眼の瞳で言われてたらもはや俺に逆らう気力など出るはずもない。
今日はなんか精神的に疲れた。
メリシュの薬は体力は強化するけど、精神面は強くしてくれないんだよな。
院長室の奥の寝室のベッドに腰かけた。
そして気づく。
背の先まで長く伸びた黄金の髪に俺の時間はわずかに止まった。
そのあまりに美しい金の髪に心を奪われてしまったのだ。
「うぅん……」
その娘は寝返りをうつ。
美しかった。ただ美しかった。
鼻筋が通ってるとか、小顔とか、顔のパーツが整っているとかそんな言葉では表せないほどのその女の子は美しいのだ。
そう、19歳の世代、最後の1人、エクスリーゼ・ハーヴァンはとにかく美しかった。