さらに先に生体、植物合成実験場(メリシュラボ)があるが、あれはアカンのでやめておこう。
 次に案内する所が最後になりそうだ。ちょうど彼らもそこにいるはず。

 工房やテトララボとは逆方向、孤児院から農場に行くまでの道の分岐点があり、そっちの方に行くと川が見えてくる。
 イーリッジ川だな。帝都セオトスまで繋がっている長い川だ。
 その近くにハーヴァン孤児院で飼っているペットの飼育場があるのだ。

「ここでハーヴァン孤児院で飼っているペッドを2匹育てているんだ」
「ペットですか。いいですねぇ。見てみたいです」

 ハーヴァン孤児院では3匹の動物を飼っている。今は2匹しかいないが、上手く飼育できている。
 できれば牛、豚とかも飼ってみたいのが予算が足りないんだよな。メリシュの言う合成生物はちょっと違う気がするし……。
 ちょうどその中の1匹であるタツタが飼育場にいた。

「聖獣ハバムートのタツタだ。仲良くしてやってくれ」
「それペッドと違うでしょ!?」

 聖獣バハムートのタツタは3アメル(メートル)ほどの大きさがあり、炎のブレスを吐くことができる、伝説の個体の龍である。

「ガアアアアアアアッッ!」
「ひぃ!」

「大丈夫だ。人間は食わないように躾けてある。それにまだ子供だからじゃれついてるだけさ」
「この大きさで子供ですか!?」

 ミナさんは少し距離を取る。
 過去の文献を調べるとあと3年くらいで大人になって5アメル(メートル)くらいまで成長するようだ。。
 今のままでも充分龍として強い。賢い子なので縄で繋いだりはしなくても不用意に人里へ行ったりはしない

 そしてその飼い主がひょこりとタツタの陰から現れたこの子である。
 俺はその子に声をかけた。

「カイル挨拶をしなさい」
「はい!」

 紺色の髪の男の子がミナさんに向かって頭を下げた。

「僕はカイル・ハーヴァンと言います。11歳です」
「あら~、可愛らしい男の子。ミナ・シルベットと言います。宜しくお願いしますね」
「アルヴァンお兄さんと一緒にいた方ですよね? テレビで見たことあります。テレビで見るよりお綺麗ですね」
「ロードさん、この子を弟にしたいです」

 カイルはこの孤児院では珍しく礼儀正しく優しい男の子だ。
 おまけに顔も良いためわりと大人の女性陣もお気にいりだったりする。性格の悪いアルヴァンより間違いなく好かれている。
 狂気を一切感じない。19歳組も見習ってほしいな。

「カイルくんがタツタさんの世話をしているってことは」
「そうだな。カイルは竜騎士(ドラグナー)を目指している」

 そしてカイルもまたマリヴェラがSSR拾いの力で孤児として引き取ったのだ。
 俺とフィロが徹底して槍術を教え込んでいる。

 俺はしつけスキルを発動した。

 カイル・ハーヴァン

 統率  SS
 武道  SS
 魔導  B
 政治  E
 教養  B
 魅力  SS
 容姿  SS
 道徳  S

 相当に高い素質を持っている。

 竜を従える才能に秀でているということだろう。
 容姿も良いため大人になったらどうなることやら。

「タツタ、僕達はずっと一緒だからね」
「ガアアアアアア~~~♪」
 タツタは甘えん坊な子で俺やマリヴェラ、育てているカイルにすごく懐いている。
 この力は大きなものとなるだろう。

「あの……それで」
「ん?」
「カイルくんの隣にいる巨人はなんなんでしょうか」

 なんだ、ここにいたのか。

「カイルの隣にいるのはマイケル。こんな身なりですがまだ11歳の男の子なんだ」
「11歳……? 私の目に映っているのは2.5アメル(メートル)近いムキムキの大男が半裸で立っているのようにしか見えないんですが」

 マイケルは目を開いた。

「やややや、初めましてですなミナ殿! それがしがマイケルですぞぉ! カイル氏と内容が被りますがその美しさたまりませんな! パパと孤児院をまわっているのでしょうか? 農場は見ましたかな! ママとそれがしで育てている野菜は絶品でありますぞ! ぜひとも帝都に持ち帰ってもらいたいですな!」

「個性強ッ!」

 マイケルはね……とにかく喋る子なんだ。
 同性で同じ年のカイルと仲良いのだけどまだ1.4アメルほどのカイルと並ぶとなかなかに差を感じる。
 マリヴェラの手伝いを積極的してくれるし、農場を手伝ってくれる。
 体力があるから農作業が実に捗る。

 1つ問題点があるとすれば

「パパ! パパ!」

 マイケルが俺の耳にヒソヒソと話をする。

「ミナさんに拙者の子を産んでもらうにはどうしたらいいですか」

 はえーよ。おまえまだ11歳だろ。
 とそんな感じで性欲がやばいのがやばい。
 別の所に行かすか。

「マイケル。ミナさんもいるし、孤児院の中の巡回をお願いできるか? 念のためな」
「そうですな! パパの頼み、このマイケルが叶えましょうぞ!」

 俺は申し訳ないと思いつつミナさんの耳を塞いだ。
 マイケルは大きく息を吸い、雄たけびをあげます。

「ウオオオオオオオオオオオオ!」
「ヒィ!?」
「相変わらず声でかいね……」

 カイルも同じように耳を塞いでる。すると彼方からパッカパッカ、足音が聞こえてきた。
 この孤児院で育てている2匹目のペットである。
 そう、マイケルが育てている馬だ。

「ヒヒィーーーン!」
「では行ってきますぞ! ばさし! 行くであります」
「名前食べ物ばっかじゃないですか!」
「ちなみ名付け親はマリヴェラだからどうにもならない。かっこ悪くても笑わないようにね」

 マイケルは側に立てかけられたハルバートを手にばさしに跨り、農場の方へ走っていく。まぁ、大丈夫だと思うがな。

「あ、あの。マイケルさんもそうですけど、ばさし……さんもなんか大きくないですか?」
「スレイプニル種だからな伝説上の聖馬だし」
「何で孤児院にそんな馬がいるんですか……」

 2.5アメルのマイケルが跨ぐことができるばさしは重馬種で体長が4アメルほどある。
 ほぼマイケル専用の馬なのだ。そこそこ体格の良い俺ですら扱えない。ド迫力の騎馬技術と重馬種なのにすんごく俊敏で息のあったコンビだったりする。
 毎日散歩と評して孤児院内の見回りをお願いしている結果、たまーに魔の森から魔物が侵入してくるんだが、マイケルとばさしによって退治をされてしまう。

 ぱっかぱっか走りさっていくマイケルにしつけスキルを使用する。

 統率  A
 武道  SSS+
 魔導  F
 政治  F
 教養  F
 魅力  S
 容姿  D
 道徳  E

 実は武道の成長率だけならフィロすらも超えている。
 これは巨人として生まれ持ったものが大きいのだろう。
 メリシュに調べてもらった所、マイケルは古の巨人族の末裔っぽいんだよな。
 文献だと成人する頃には3アメルくらいに成長し、鋼の肉体はあらゆる種族を凌駕すると言われている。

 11歳ですでにあの体だからな。

「ここにいるってことは孤児なんですよね? どこで見つけたんですか」
「そこのイーリッジ川の河川敷で捨てられていました」
「じゃあばさしさんは……?」
「河川敷に赤ん坊の馬がいました」
「タツタさんは?」
「河川敷に卵が」

「その河川敷どうなってるんですか!?」

 俺に聞かれても……、全部マリヴェラのSSR拾いが悪い。
 あと1匹飼っているペットがいるんだが、今は去年卒院した子と一緒に旅に出ている。

「では僕達もマイケル君の手伝いに行ってきます。ではミナさん、ゆっくり楽しんで下さいね」

 カイルはタツタに跨って大空へと旅立っていく

「でも、カイル君はすごくイイですね。ちょっと好みかも」

 ミナさんは美少年系好みとみた。アルヴァンもそうだしな。
 俺とかマイケルのようなガタイの良い系は理解が得られないなぁ……。

「そろそろ帰ろうか」
「はい!」