若き皇帝陛下イングリス・ウラウ・ブラウロス様の所へ俺達は向かう。
「アルヴァン、俺もマリヴェラも変装しないでいいのか?」
「ああ、陛下にはある程度の事情をお話している。パパとママと七英雄の関係は伏せているけどね」
「分かった。それ前提で話をしよう。あの2人の副官もか?」
「うん、僕は信頼できる部下を手元に置いている。もちろんそれ相応の監視はしているけどね」
このアルヴァンという息子、非常に懐疑心が強い。
同年代の子達ですら心の奥底では信じていない所がある。
「僕が絶対的に信用しているのはママ! とあとはパパぐらいなものだから」
俺達2人以外にも信頼できる人がアルヴァンにも現れたらいいのだが……。
そしてマリヴェラのためだったら俺すら蹴落としそうで明確な一線を引いている。
皇帝陛下がおられる皇居区画の方へ向かう。
マリヴェラがさっきから黙り込んでいた。
「……」
「どうした? 皇帝陛下に会うのに緊張してるのか?」
「それもある……。けどね。さっきから人とすれ違うたびに挨拶をされるの! 私の名前を! 知らない人が! みんな知ってるの!」
「ママは美しいことで有名だからね」
「あんたのせいでしょ!」
いけしゃあしゃあと言う。
これからもアルヴァンはマリヴェラの良さを宣教師として帝国中に伝えるのだろうな。
この宮殿に入ってからマリヴェラが誰か見られていると言っていたがきっとこの件なのだと思う。
皇居内の兵士、皇族護衛の衛士だったか。
しかし、こんなラフな格好で良かったんだろうか。まだ全身鎧の方がマシだったかもしれない。
皇帝陛下に謁見するだもんな。
そうこうしている内に皇帝陛下がおられる部屋へと通される。
貴賓室というやつだな、部屋の中一品一品の質が段違いだだ。
奥のソファに座られているのがイングリス皇帝陛下だな
アルヴァンが膝をついたのでマネをする。
「陛下、魔王様と魔英雄様をお連れしました」
「顔をお上げ下さい。初めましてエストランデ様、いえマリヴェラ様とロード様。お会いできて光栄です」
イングリス様は立ち上がり、俺達に対して頭を下げてきました。
うむ、この場合どうすりゃいいんだ。孤児院の院長ごときじゃ皇帝陛下と謁見できる立場にはいなかったからよく分からない。
そんな時、マリヴェラは声を上げた
「マリヴェラ・ハーヴァンと申します。皇帝陛下、このような場を設けて頂きありがとうございます」
さすが元魔王の姫君。堂々となさっておられる。
「ご丁寧にありがとうございます。今日は勇ましいお言葉は言われないいのでしょうか」
「うげぇ!? ごほっ!」
いつものマリヴェラに戻った。
「ここには我々しかいないのでいつも通りにして頂いて構いません」
「ママ、こちらに座ってくれ」
立派なソファに俺とマリヴェラは座らせてもらうことになった。アルヴァンは側にあるティーワゴンでカップに紅茶を入れ始める。
そのためにメイドさんとかいるものじゃと思ったが余計な人を入れないようにしたのか。
アルヴァンは紅茶を入れて差し出し、イングリス様の隣に座る。
「魔導機械による盗聴対策はしてある。何を話しても問題ないよ」
「そうか、発言にも気をつけないといけないな」
そっか、このような場はそういうことも気にしないといけないんだな。孤児院だと気にすることはないが、今後は考えて発言をしないと……。
対面に座るイングリス陛下。見事な空色の髪に翠色の瞳、王族だけあって凛々しい顔付きだ。あと5年経てば社交界はきっと騒ぎになるだろうな。
確か今年で11歳だっけ。政治はアルヴァンに任せているようだが当然、公務は存在する。実際大変だろうな。
「マリヴェラ様のことはよくアルヴァンから聞いていますよ」
「どのような話ですか?」
聞いてみるとマリヴェラの顔が引き攣る。
「えっと、子供の時に井戸にお尻が」
マリヴェラは立ち上がり、アルヴァンを叩こうとしたが距離があったため届かない。
「まったく皇帝陛下にまで……、ママの恥ずかしい話を広めるんじゃありません」
「ママの素晴らしさを知ってもらいたかっただけなんだ」
「ふふ、ロード様は良き父として尊敬していると聞きました」
「それは嬉しいですね」
「何でロードだけ……ブツブツ」
「今の帝国内でアルヴァンに叱りつけることのできる人間はマリヴェラ様だけですよ」
【鋼魂摂政】。そのような二つ名を得るためにこの4年で良いことも悪いことも行ったと聞いている。
詳細は詳しくないが粛清という形でかなり帝国の権力者を追放したようで各所から恨まれているとも聞いている。
それらが全て魔王国のためと思うと俺の責任も重大だと言えるだろう。
「私がもっとしっかりしていれば……アルヴァンに苦労かけてばかりで申し訳ありません」
イングリス様の表情が曇る。御父上である前皇帝を亡くなられて、この帝国は結構ドタバタでしていた。
兄弟もおらず、即位は確実だったがその即位に乗ろうとする帝国貴族の動きに苦労されたと聞く。一般人である俺ですら知っているのですから渦中のイングリス様やアルヴァンは大変だっただろう。
「そのための魔王国です。陛下も帝国もまとめることできる。大いなる計画……。絶対成功させないといけません」
アルヴァンは陛下も助けたいのかもしれないな。
少し冷めてしまった紅茶を口に含む。
「アルヴァン、俺もマリヴェラも変装しないでいいのか?」
「ああ、陛下にはある程度の事情をお話している。パパとママと七英雄の関係は伏せているけどね」
「分かった。それ前提で話をしよう。あの2人の副官もか?」
「うん、僕は信頼できる部下を手元に置いている。もちろんそれ相応の監視はしているけどね」
このアルヴァンという息子、非常に懐疑心が強い。
同年代の子達ですら心の奥底では信じていない所がある。
「僕が絶対的に信用しているのはママ! とあとはパパぐらいなものだから」
俺達2人以外にも信頼できる人がアルヴァンにも現れたらいいのだが……。
そしてマリヴェラのためだったら俺すら蹴落としそうで明確な一線を引いている。
皇帝陛下がおられる皇居区画の方へ向かう。
マリヴェラがさっきから黙り込んでいた。
「……」
「どうした? 皇帝陛下に会うのに緊張してるのか?」
「それもある……。けどね。さっきから人とすれ違うたびに挨拶をされるの! 私の名前を! 知らない人が! みんな知ってるの!」
「ママは美しいことで有名だからね」
「あんたのせいでしょ!」
いけしゃあしゃあと言う。
これからもアルヴァンはマリヴェラの良さを宣教師として帝国中に伝えるのだろうな。
この宮殿に入ってからマリヴェラが誰か見られていると言っていたがきっとこの件なのだと思う。
皇居内の兵士、皇族護衛の衛士だったか。
しかし、こんなラフな格好で良かったんだろうか。まだ全身鎧の方がマシだったかもしれない。
皇帝陛下に謁見するだもんな。
そうこうしている内に皇帝陛下がおられる部屋へと通される。
貴賓室というやつだな、部屋の中一品一品の質が段違いだだ。
奥のソファに座られているのがイングリス皇帝陛下だな
アルヴァンが膝をついたのでマネをする。
「陛下、魔王様と魔英雄様をお連れしました」
「顔をお上げ下さい。初めましてエストランデ様、いえマリヴェラ様とロード様。お会いできて光栄です」
イングリス様は立ち上がり、俺達に対して頭を下げてきました。
うむ、この場合どうすりゃいいんだ。孤児院の院長ごときじゃ皇帝陛下と謁見できる立場にはいなかったからよく分からない。
そんな時、マリヴェラは声を上げた
「マリヴェラ・ハーヴァンと申します。皇帝陛下、このような場を設けて頂きありがとうございます」
さすが元魔王の姫君。堂々となさっておられる。
「ご丁寧にありがとうございます。今日は勇ましいお言葉は言われないいのでしょうか」
「うげぇ!? ごほっ!」
いつものマリヴェラに戻った。
「ここには我々しかいないのでいつも通りにして頂いて構いません」
「ママ、こちらに座ってくれ」
立派なソファに俺とマリヴェラは座らせてもらうことになった。アルヴァンは側にあるティーワゴンでカップに紅茶を入れ始める。
そのためにメイドさんとかいるものじゃと思ったが余計な人を入れないようにしたのか。
アルヴァンは紅茶を入れて差し出し、イングリス様の隣に座る。
「魔導機械による盗聴対策はしてある。何を話しても問題ないよ」
「そうか、発言にも気をつけないといけないな」
そっか、このような場はそういうことも気にしないといけないんだな。孤児院だと気にすることはないが、今後は考えて発言をしないと……。
対面に座るイングリス陛下。見事な空色の髪に翠色の瞳、王族だけあって凛々しい顔付きだ。あと5年経てば社交界はきっと騒ぎになるだろうな。
確か今年で11歳だっけ。政治はアルヴァンに任せているようだが当然、公務は存在する。実際大変だろうな。
「マリヴェラ様のことはよくアルヴァンから聞いていますよ」
「どのような話ですか?」
聞いてみるとマリヴェラの顔が引き攣る。
「えっと、子供の時に井戸にお尻が」
マリヴェラは立ち上がり、アルヴァンを叩こうとしたが距離があったため届かない。
「まったく皇帝陛下にまで……、ママの恥ずかしい話を広めるんじゃありません」
「ママの素晴らしさを知ってもらいたかっただけなんだ」
「ふふ、ロード様は良き父として尊敬していると聞きました」
「それは嬉しいですね」
「何でロードだけ……ブツブツ」
「今の帝国内でアルヴァンに叱りつけることのできる人間はマリヴェラ様だけですよ」
【鋼魂摂政】。そのような二つ名を得るためにこの4年で良いことも悪いことも行ったと聞いている。
詳細は詳しくないが粛清という形でかなり帝国の権力者を追放したようで各所から恨まれているとも聞いている。
それらが全て魔王国のためと思うと俺の責任も重大だと言えるだろう。
「私がもっとしっかりしていれば……アルヴァンに苦労かけてばかりで申し訳ありません」
イングリス様の表情が曇る。御父上である前皇帝を亡くなられて、この帝国は結構ドタバタでしていた。
兄弟もおらず、即位は確実だったがその即位に乗ろうとする帝国貴族の動きに苦労されたと聞く。一般人である俺ですら知っているのですから渦中のイングリス様やアルヴァンは大変だっただろう。
「そのための魔王国です。陛下も帝国もまとめることできる。大いなる計画……。絶対成功させないといけません」
アルヴァンは陛下も助けたいのかもしれないな。
少し冷めてしまった紅茶を口に含む。