子供達の誘拐事件から夜遅く、雨が強く降り始めてきた。
オンボロ孤児院ゆえに雨漏り箇所も多い。建て替えもしたい所だがそんな金があるわけもない。
恩返しスキルで相当強くなった。冒険者として金を稼ぐってのも悪くないな……。
「ロード、ちょっといい?」
寝間着を着たマリヴェラが顔を出す。
孤児院は2階建てで、子供達とマリヴェラは普段2階で一緒に寝ている。
俺は一階の院長室の奥が個室となっているのでそこで寝泊まりをしている。
ここは入口にも近く、何か物音がしてもすぐに反応することができるのだ。
「どうした」
マリヴェラはドギマギして両手を手招いてみせた。
少しだけ頬も紅潮している。
「きょ、今日って……その雷の日じゃない?」
「だから子供達と一緒に寝たんじゃないのか?」
「そうなんだけど……子供達が抱かせてくれなくて」
魔の国が滅んだ時、大雨で雷が強くなっている時だった。
そして英雄王アレリウスが勇者の雷魔法で魔王を焼き殺したという話もある。
マリヴェラは雷にトラウマがあり、雷の日は怖がって、誰かと一緒じゃなきゃ眠れなくてなってしまった。
大人になってマシになったがやはり今でも震えてしまうと言う。
「なら来るといい。昔みたいに横で寝るとするか」
「もう! 少しくらい躊躇してよ!」
妹分なのに何でそんなに怒っているのだろうか。マリヴェラはぷりぷりと怒り始めた。わけがわからん。
子供の時のようにベットに2人は狭いので、布団を横並びにして手を握ってあげることくらいしかできない。
「まったくもう! 私の気持ちを全然理解してくれない」
「よく分からんが、相手に理解を求めちゃダメだぞ。ちゃんと正直に話さないと」
「うるさい鈍感」
「がーん」
マリヴェラの手を握ると震えが収まっているのを感じる。
しかし柔らかくて綺麗な手だ。
この手で子供達を支えてくれたんだな……。そして俺自身も。
「今回何とかなったのはこの【おん返し】スキルのおかげだな」
「そうよね。それがなかったら本当にとんでもないことになっていたわ。でも、何もせずにスキル取得できるのはすごいわね」
「確かにそれもすごいけど……この力のすごい所はそこじゃないさ」
「どういうこと?」
「俺がスキルを習得するってことは俺達の子供達がしっかり成長していることと同じ。つまり、無事に過ごしているってことが分かるんだ」
「なるほどね。便りはなくても元気にやってるって証明だもんね」
「まぁ1ヶ月に1回は便りが来るんだけどな」
「親孝行な子供達を持って私達は幸せだわ」
マリヴェラと笑い合ってしまう。
5人の子供達が送ってくる便りにはその時にあったことが事細かに記されていた。
最後にパパ、愛していると書かれているところが子供らしく可愛らしい。何歳になっても子供は子供だな。
「明日から頑張ろうか。次に卒院する子供達のため【しつけ】スキルを使わないとな」
「ふふ、そうね。じゃあ明日の教育はお願いねパパ」
「ああ、ママはしっかりフォローを頼むよ」
「ねぇロード」
「ん?」
「どこへも行かないでね」
「……」
「恩返しスキルで強くなったからって無茶をする必要はないの。子供達の側にいてくれること。それが一番子供達のためになるのよ」
見透かされてしまったな。
そうだな。もう20年以上も一緒にいるんだ。
お互いの性格を分かりきってると言ってもいい。
「……どこも行かないよ」
「君も行くなよ」
「行かないわよ。行く宛もないし」
「だったら俺の側にいててくれ。これからもずっと」
「そそそそそれってプロポー」
「ふわぁあ……おやすみ」
正直眠気が限界だった。
マリヴェラがバカァー! って言ってたような気もするが暴言はいつものことなので気にしないようにしよう。
俺とマリヴェラはこうやって支え合い生きてきた。
不幸な出会いだった俺とマリヴェラだったけど、今はとっても幸せだ。
このままスローライフに第二の人生を過ごしていくのも悪くない。
競争社会に挑む子供達が疲れた時に戻ってこれるような孤児院でいたい。
そう願っていた……願っていたんだ。
俺はその時軽く考えていたのである。
この恩返しスキルの恐ろしさを……。
簡単なスキルはすぐに習得できるため、始めは鳴り響くことが多かったが時が経つにつれてスキル習得の音は頭に響かなくなっていった。
でも時々……聞こえる時があったんだ。
それはあの日に近づくたびに物騒になっていった。
ーー【神族特攻】を習得したーー
ーー【極大禁術魔法】を習得したーー
ーー【独裁者レベル10】を習得した
ーー【脳操作《ブレインコントロール》】を習得したーー
ーー【トランス】を習得したーー
そしてマリヴェラの29歳の誕生日を迎える。
オンボロ孤児院ゆえに雨漏り箇所も多い。建て替えもしたい所だがそんな金があるわけもない。
恩返しスキルで相当強くなった。冒険者として金を稼ぐってのも悪くないな……。
「ロード、ちょっといい?」
寝間着を着たマリヴェラが顔を出す。
孤児院は2階建てで、子供達とマリヴェラは普段2階で一緒に寝ている。
俺は一階の院長室の奥が個室となっているのでそこで寝泊まりをしている。
ここは入口にも近く、何か物音がしてもすぐに反応することができるのだ。
「どうした」
マリヴェラはドギマギして両手を手招いてみせた。
少しだけ頬も紅潮している。
「きょ、今日って……その雷の日じゃない?」
「だから子供達と一緒に寝たんじゃないのか?」
「そうなんだけど……子供達が抱かせてくれなくて」
魔の国が滅んだ時、大雨で雷が強くなっている時だった。
そして英雄王アレリウスが勇者の雷魔法で魔王を焼き殺したという話もある。
マリヴェラは雷にトラウマがあり、雷の日は怖がって、誰かと一緒じゃなきゃ眠れなくてなってしまった。
大人になってマシになったがやはり今でも震えてしまうと言う。
「なら来るといい。昔みたいに横で寝るとするか」
「もう! 少しくらい躊躇してよ!」
妹分なのに何でそんなに怒っているのだろうか。マリヴェラはぷりぷりと怒り始めた。わけがわからん。
子供の時のようにベットに2人は狭いので、布団を横並びにして手を握ってあげることくらいしかできない。
「まったくもう! 私の気持ちを全然理解してくれない」
「よく分からんが、相手に理解を求めちゃダメだぞ。ちゃんと正直に話さないと」
「うるさい鈍感」
「がーん」
マリヴェラの手を握ると震えが収まっているのを感じる。
しかし柔らかくて綺麗な手だ。
この手で子供達を支えてくれたんだな……。そして俺自身も。
「今回何とかなったのはこの【おん返し】スキルのおかげだな」
「そうよね。それがなかったら本当にとんでもないことになっていたわ。でも、何もせずにスキル取得できるのはすごいわね」
「確かにそれもすごいけど……この力のすごい所はそこじゃないさ」
「どういうこと?」
「俺がスキルを習得するってことは俺達の子供達がしっかり成長していることと同じ。つまり、無事に過ごしているってことが分かるんだ」
「なるほどね。便りはなくても元気にやってるって証明だもんね」
「まぁ1ヶ月に1回は便りが来るんだけどな」
「親孝行な子供達を持って私達は幸せだわ」
マリヴェラと笑い合ってしまう。
5人の子供達が送ってくる便りにはその時にあったことが事細かに記されていた。
最後にパパ、愛していると書かれているところが子供らしく可愛らしい。何歳になっても子供は子供だな。
「明日から頑張ろうか。次に卒院する子供達のため【しつけ】スキルを使わないとな」
「ふふ、そうね。じゃあ明日の教育はお願いねパパ」
「ああ、ママはしっかりフォローを頼むよ」
「ねぇロード」
「ん?」
「どこへも行かないでね」
「……」
「恩返しスキルで強くなったからって無茶をする必要はないの。子供達の側にいてくれること。それが一番子供達のためになるのよ」
見透かされてしまったな。
そうだな。もう20年以上も一緒にいるんだ。
お互いの性格を分かりきってると言ってもいい。
「……どこも行かないよ」
「君も行くなよ」
「行かないわよ。行く宛もないし」
「だったら俺の側にいててくれ。これからもずっと」
「そそそそそれってプロポー」
「ふわぁあ……おやすみ」
正直眠気が限界だった。
マリヴェラがバカァー! って言ってたような気もするが暴言はいつものことなので気にしないようにしよう。
俺とマリヴェラはこうやって支え合い生きてきた。
不幸な出会いだった俺とマリヴェラだったけど、今はとっても幸せだ。
このままスローライフに第二の人生を過ごしていくのも悪くない。
競争社会に挑む子供達が疲れた時に戻ってこれるような孤児院でいたい。
そう願っていた……願っていたんだ。
俺はその時軽く考えていたのである。
この恩返しスキルの恐ろしさを……。
簡単なスキルはすぐに習得できるため、始めは鳴り響くことが多かったが時が経つにつれてスキル習得の音は頭に響かなくなっていった。
でも時々……聞こえる時があったんだ。
それはあの日に近づくたびに物騒になっていった。
ーー【神族特攻】を習得したーー
ーー【極大禁術魔法】を習得したーー
ーー【独裁者レベル10】を習得した
ーー【脳操作《ブレインコントロール》】を習得したーー
ーー【トランス】を習得したーー
そしてマリヴェラの29歳の誕生日を迎える。