「貴様らなんぞに、教えるつもりはない」
 ヴィアザは男の心臓を刺し貫いた。
「ほうら、さっさとかかってこい。俺達は忙しいんだ」
 骸から刀を引き抜いて、挑発した。
「舐めやがって!」
「それはどちらだろうな?」
 人数がやけに多いのが分かっていたので、一撃で仕留めることに決めた。
 互いの身体が交錯し、腹を刺し貫かれながらも、男の心臓を一突きした。
「な、なんで……?」
「貴様よりも、かなり長く地獄を歩いてきた」
 ヴィアザは口端から鮮血を滴らせながら、低い声で言った。
 刀を地面に突き立てると、腹に刺さった剣を簡単に抜いて捨てた。
 骸を足で押さえて、刀を引き抜くと、暗い目を向けた。
 右手で被っていたフードを脱いだ。
「なっ……!」
 フードで隠れていた美しい顔を見て、彼らの動きが止まった。
 赤い目で、彼らを睨みつけた。
 見た目が整いすぎているせいか、美しさの欠片もない雰囲気を纏っていても、誰もが見惚れてしまった。
「はぁ」
 ヴィアザは盛大な溜息を吐くと、固まっている男との距離を詰めて、首を斬り落とした。
 その一撃で、彼らは我に返って、武器を握り直した。
「見惚れている場合じゃないだろうに。ここは戦いの場だぞ?」
 呆れながら言うと、近くにいた女の後ろを取ると、背後から心臓を刺し貫いた。
 骸を蹴り飛ばして刀を引き抜く。
「少しでも傷つけるという、ある種のバカはいないのか?」
 ヴィアザが嘲笑した。
「そんなに怪我をしたいなら、これでも受けてみろ!」
 二人の男が前方から駆け出してきて、突きを繰り出した。
 二本の剣は、庇うように出された右腕と、左胸を刺し貫いた。
 ヴィアザは口端から鮮血を滴らせながら、左手の刀を地面に突き立てた。
 右手で左胸に突き刺さった剣を抜こうと、邪魔な男二人を蹴り飛ばした。
 強引に武器を手離された二人は、ヴィアザに視線を投げた。
 彼らの視線を受けても一切動じず、ヴィアザは右手で左胸を貫通している剣の柄を握り、ゆっくりと抜き始めた。
「なんで、そんな真似ができるんだよっ! 腕だって無傷じゃないんだぞ!」
「だからなんだよ。俺はただ、邪魔なもんを取り除いているだけだ」
 言っている間に、ヴィアザは左胸の剣を抜き捨てた。
 次に左腕に刺さっている剣の柄を握り、少しずつだが確実に、引き抜いていく。
 顔をしかめていても、美しさは健在だった。
「これで……」
 ヴィアザは突き刺さっていた剣を抜き終え、両手に剣を握った。
 丸腰の男二人に向かって、突きを繰り出した。その切っ先は、二人の頭を刺し貫いた。
 なにが起こったのか分からないまま、二人は絶命した。
「殺しというよりは、殺戮……の方が合っているか」
 ぽつりと言い、骸を革靴で踏み潰した。刀を握って、溜息を吐いた。
「無敵じゃない! だから、休む暇を与えなければ……!」
「確かにそうだ。だが、舐められるのは嫌いでな」
 取り囲んで襲い掛かってきた男五人の首を、一度の攻撃で刎ねた。
 五人の攻撃は当たることなかった。
「くっ! なら、これはどうだ!」
 ヴィアザの背後から鞭が迫り、腕もまとめて身体を締め上げる。
「かかれ!」
 その声とともに三人の男達が、攻撃を放ってきた。
 突きとふたつの斬撃。
 ヴィアザは右胸を刺し貫かれ、右肩と左肩を斬りつけられた。
 予想以上に鞭の拘束が強く、どうしたものかと思っていた。
 ヴィアザは拘束されているのが上半身だけだと分かり、たまたまだが、ひと工夫すれば刀を扱えると判断した。
 ヴィアザは左手に握っていた刀を手離し、左足で柄をそれなりに高く蹴り上げた。
 ぽかんとする男達を見ながら、いったん高々と上がった刀を見つつ、柄を横向きにして口で挟んで受け止めた。
「はあっ!?」
 驚く男達を見ながら、ヴィアザはそのまましゃがんで、首を横に動かした。
 その攻撃は男三人の腹を斬り裂いた。
 身体の向きを変え、鞭を握っている男に刀を突き刺した。
 浅かったかもしれないが、拘束を解かせるには十分すぎるぐらいの、痛手を負わせた。鞭の拘束が解かれた。
「ふう」
 ヴィアザは柄から口を離し、自由になった身体を一瞥しながら、右胸を刺している剣を引き抜いて捨てた。
 腹を斬った三人の男の息の根を止め、怯えきった鞭を持った男の心臓を刺し貫いた。
「動きを止めたのはいいが、甘かったな」
 冷たくヴィアザが言い放った。
「ちくしょう!」
 男が怒り任せに、突っ込んできた。
 右手で手首を捻り上げ、武器を無効化すると、左手の刀で、命を奪った。
 骸をその場に捨て置き、距離をじりじりと詰めてきた男達を一瞥した。
 数多くの傷から鮮血がとめどなく溢れ出していても、ヴィアザの放つ殺気は、その場にいる者達を委縮させるには十分すぎた。
 みな、自分が生きたいがために、躊躇っているように、ヴィアザには見えた。
「動かないのであれば、こちらからいくぞ」
 言いながら、あっという間に男達に近づいて、斬撃を放った。
 一撃で三人の命を奪った。
 傷を負っていてもそれを感じさせない気迫で、次々に男達を、斬り続けた。
 逃げる時間すら与えず、一瞬のうちに命を狩り取っていく。